1992年秋CCS特集第2部:業界動向

欧米大手は業界再編で火花、危ぶまれる国産システムの地盤沈下

 1992.10.30−コンピューターケミストリーシステム(CCS)市場は急速に拡大しており、これにともなって米国および日本でCCSベンダーの業界再編が進みつつある。米国の大手ベンダーも1980年代までは小規模なベンチャーにすぎなかったが、現在では百数十人のスタッフを抱えるところも多い。ベンダー同士の吸収や合併で規模拡大を図ろうとする傾向も強くあらわれてきている。これらと提携する国内のベンダーにも影響が及ぶのは必至。すでに国内においても再編の火ぶたが切られつつあり、とくに連合化の方向性が顕著になってきた。「最新CCS世界地図」をみながら業界動向を概観しよう。

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 7面に掲載した「最新CCS世界地図」は、国内で販売されているシステムをめぐるベンダー間の提携関係をまとめたものである。大きな囲みの中の企業はCCSソフトウエアのベンダー、小さな囲みの中の企業は直接ソフトウエアの販売には関与していない。また、図中の販売代理店契約は、必ずしもそのベンダーの全製品を対象にしていないこと、資本関係は全株主を明記したものではないことに注意してもらいたい。

 この世界地図は2年ぶりに作成されたが、この間の顕著な特徴は海外製品優位の構図がますます強まってきたことである。海外にはまだまだ数多くのベンダーがおり、国内への進出が依然活発に行われている。それと同時に大手ベンダーの市場支配力が急速に増大しつつある。とくに、分子モデリング、分子シミュレーションで業界をリードする大手3社のM&A戦略が目立っている。

 最近の業界再編の口火を切ったのは、昨年8月のポリジェンとモレキュラーシミュレーションズ(MSI)の合併。MSIはそれに先立って英国のケンブリッジモレキュラーを買収していたので、結果的には3社の合併劇になった。1991年における両社の売り上げ合計は約2,500万ドル、社員数は130名を数える。トライポスも、NMRのデータ解析ソフトで高い実績をもつニューメソッドリサーチ(NMRi)を今春買収。製品構成と企業規模を拡大しており、社員数は120名に増えている。

 今年の6月には、バイオシムが化学会社のコーニングに買収された。バイオシムはコーニングの100%子会社となるが、独立の企業として活動していく。バイオシムはかねてより、長期的な研究投資・開発投資を行うためにパートナーを探していた。同社の売り上げは3,000万ドルを、社員数は200名を越えている。

 これら海外ベンダーは、CCS専業でこれだけの事業規模があるため、製品開発力も日本のベンダーの比ではない。

 その一方で、国産システムの地盤沈下が危惧される。とくにパソコン版CCSの落ち込みが激しく、ベンダー各社が事業効率のいいワークステーション版に流れている背景はあるが、大規模に展開しているのはほとんど1社だけになっている。国産勢の奮起も待たれるところだ。