米MSIがハイスループット実験のサービス事業に進出へ

コンビナトリアル材料科学に対応

 1999.02.25−コンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手の米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)は、“コンビナトリアル材料科学”分野に進出し、新薬の開発に利用されているコンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)技術を、触媒や分離、ポリマー、超分子などの材料開発分野に応用するための技術サービス事業を2 −3ヶ月以内をめどに立ち上げる。“ハイスループット実験”(HTE)と銘打ち、96穴マイクロプレート上で大量の物性試験を高速に行なおうというもの。ユーザー企業に対し、個別の受託研究あるいは共同研究の形で技術およびサービスを提供する。この分野では1995年設立のベンチャーである米シミックスが先行しているが、MSIでは早期にキャッチアップを図っていく考えである。

 MSIは、医薬分野のコンビケム/HTSで豊富な実績を持つ米ファーマコピアの子会社であり、今回の新事業はMSIの得意な分子シミュレーションおよびライブラリーデザイン、物性解析などのソフトウエア技術を、ファーマコピアの微量合成・分析、ラボラトリーオートメーション技術と合体させることで可能になった。

 一つの分子に複数の置換基を組み合わせることでさまざまなパターンの化合物群を設計、それらを実際に極小のビーズ上で合成し、マイクロプレートを使って大量に分析にかけていく。たくさんの実験を行うことで、有望な候補化合物に行き当たる可能性が高くなるという考え方である。

 MSIのジョン・ニューサムCSO(最高科学責任者)は「コンピューターで分子設計を効率化しても、最終的には実験をしなければならず、最後にはここがボトルネックになる。また、現在の実験は必要以上にサンプルをつくりすぎてしまってムダが多くコスト高だ。HTEによって、実験を含めた研究開発全体のスピードアップが可能になる」と述べる。

 MSIでは今後、触媒やポリマーなどアプリケーションに強い専門スタッフを20名以上集めて、本格的な事業展開に乗り出していく計画。日本市場に関しては、日本法人の帝人モレキュラーシミュレーションを介さず、米本社からダイレクトに市場展開を図る。ソフトウエアの販売事業ではないためだという。