NEC基礎研など、CCSをオープンソース化

バーチャルマイクロスコープを無償提供

 1999.10.29−NEC基礎研究所の高田俊和主席研究員らのグループは、分子軌道法と分子動力学法を統合し、化学反応などの様子をコンピューター上で“観察”することを可能にするコンピューターケミストリーシステム(CCS)である「バーチャルマイクロスコープ(AMOSS-H11)」をオープンソース化し、広く無償で提供をはじめた。情報処理振興事業協会(IPA)の創造的ソフトウエア育成事業のもとで、富士総合研究所・計算科学技術研究センターなどと共同で開発されたものをベースに、さらに改良が加えられている。プログラムの頒布は、萌芽的ソフトの育成を目的とする産官学の共同組織である産業基盤ソフトウエア・フォーラム(SIF)を通じて行われる。

 バーチャルマイクロスコープは、時間ステップごとに非経験的分子軌道法計算を連続で実行し、計算結果をリアルタイムでアニメーション表示させることができるシステム。分子軌道法を使っているため原子や分子の電子状態をシミュレーションすることができ、化学反応の際にそれぞれの電子状態がどのように影響し合っているかなどの時間変化を克明に観察することができる。計算中でも自由に表示モードを変更できるなど、高度なインラタクティブ性を持っている。

 クライアント/サーバー(C/S)版とウェブ対応版があり、C/S版はサーバーとしてNECのスーパーコンピューターSX-4や並列コンピューターCenju-4などが使える。クライアントはSGIのUNIXワークステーション。一方のウェブ版はイントラネットを含むウェブ環境に対応しており、Javaを使ってウェブブラウザーだけで操作できるようにした。

 計算エンジンは、NEC独自のAMOSSを採用しているが、今回のオープンソースライセンスではこのエンジンも含めたすべてのソースコードを提供する。ソースコードの修正・機能追加に制限はなく、改変部分の著作権はその開発者に帰属する。プロジェクトの代表である高田研究員は「共通の財産として大勢の人に自由に利用してもらって、ソフトの性能を高めていきたい」と話している。