富士通がOMGからCAChe事業を買収

国内ではソニー・テクトロからCCS事業引き継ぎ

 2000.03.16−富士通は、欧州のコンピューターケミストリーシステム(CCS)最大手ベンダーである英オックスフォードモレキュラーグループ(OMG)から分子設計支援システム「CAChe」(商品名)に関する全ビジネスを買い取った。4月1日からCACheの開発および販売の全権が富士通に移管される。欧米のCCSベンダー同士の買収・合併は以前から盛んだが、国内ベンダーが欧米ベンダーから事業を取得するのは初めて。今回、CACheの3,000サイトにおよぶユーザーベースと、欧米を網羅する販売・マーケティングの強力なチャンネルを入手したわけで、富士通のCCS事業は一気に世界規模に広がったことになる。

 CACheはもともと計測器大手の米テクトロニクスが社内向けに開発したシステム。テクトロニクスとソニー・テクトロニクスのジョイントベンチャーであるCACheサイエンティフィックをOMGが買収したのが1995年2月のこと。ソニー・テクトロニクスは91年からCACheを国内で販売してきたが、本件にともない、他のOMG製品を含むCCSの全ビジネスを富士通へ引き渡すことになった。

 富士通は、旧CACheサイエンティフィック時代からのオレゴン州ビーバートンのOMG拠点から数名を富士通システムビジネスオブアメリカ(FSBA)の社員として雇用し、それを新たにFSBA拠点としてマーケティングの本部にする。開発に関しては、富士通九州システムエンジニアリング(FQS)の子会社であるFQSポーランドにて行うこととし、年内はOMGの旧開発部隊と協調して作業を進める予定。

 今後、分子軌道法のMOPAC2000、分子動力学法のMASPHYCといったオリジナルの計算プログラムをCACheと統合していく。CACheにももともと各種の計算化学プログラムが組み込まれているが、これまでは例えばMOPACでも古いバージョン6しかサポートされていなかったわけで、その意味では既存のCACheユーザーにとっても今回の買収はメリットがあるといえる。

 また、ここ数年にわたって富士通としても、WinMOPACあるいはMOPAC2000を欧米で普及させる努力を払ってきたが、なかなか難しいのが実情だった。例えば、国内では3,000本売れているWinMOPACも欧州ではわずか100本、米国での実績はさらに小さい。その点で、CACheのユーザーベースは富士通にとって魅力的であり、CACheユーザーに売り込むことで富士通製CCSの欧米での普及が加速することにつながるだろう。

 一方、ソニー・テクトロニクスとしては、全社的にビジネスの集中と選択を進めてきており、その中でCCS事業を切り捨てる判断がなされたようだ。利益は出ていたが、ここ数年は売り上げ的には横ばいだったとみられる。