米MSIがマテリアルスタジオを発売

日本では菱化システムが7月から

 2000.04.04−コンピューターケミストリーシステム(CCS)の大手ベンダー、米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)は、パソコンで動作する材料設計支援システム「マテリアルスタジオ」(商品名)を開発し、販売を開始した。日本国内では、総代理店の菱化システムを通して7月から出荷開始する予定。これまで、パソコン版CCSは、医薬などの有機低分子化合物やたん白質などの生体分子を設計対象にしたものが多かったが、マテリアルスタジオは無機化合物や結晶、アモルファス、ポリマーなどをシミュレーションすることができる。将来的には、MSIは材料系CCSをUNIXからいわゆる“ウィンテル”環境に移行させる計画であり、今後継続的に機能強化が図られていくとみられる。

 マテリアルスタジオは、ウィンドウズ95/98/NTで動作し、3次元グラフィックを利用して分子/材料のモデルを組み立て・操作したり、計算によって物性予測やX線回折パターンのシミュレーションをしたりする機能を持っている。ウィンドウズ対応のソフトなのでエクセルなどのツールと連携できるのも特徴。

 また、大規模なシミュレーション演算を、ネットワーク上のNTやLinux/UNIXサーバーで分散処理させることも簡単に行える。

 これまで、MSIの材料系CCSのグラフィック環境は、旧バイオシム系の「Insight」と旧MSI系の「CERIUS2」が並立していたが、今回のマテリアルスタジオにはそれぞれのグラフィック機能が統合されていることに加えて、ポリマーと結晶のモデルビルダー機能を備えている。

 また、独自の力場を持つソルバーモジュール「COMPASS」、アモルファス状態の分子のバルクモデルを構築・解析できる「アモルファス・セル」、X線などの回折パターンを予測する「RefRex」が含まれる。

 日本での出荷が遅れるのは、日本国内のパソコン各機種に対する動作確認作業のため。材料系シミュレーションのためのソルバーは、ポリマー系の分子動力学法「Discover」などを先行させてウィンドウズに移植しており、国内出荷時には同時提供が可能。次いで、第一原理分子動力学の「CASTEP」、密度汎関数法の「DMol3」が、年末リリースのバージョン1.5で用意される予定。ただ、UNIX上の各ソルバーは自由に利用できるので、それまではマテリアルスタジオをクライアント専用機として使えば問題なく使用できる。

 ソフト価格は、クライアントになるビジュアライザーモジュールで184万1,000円。これに上乗せして128万9,000円で5ライセンス、184万1,000円で10ライセンスをさらに追加できる。

 ウィンテルの世界では、インテル初の64ビットプロセッサーであるItanium(アイテニアム、以前にマーセドと呼ばれていたもの)が注目されており、すでにMSIとインテルはCASTEPとDMol3の移植を共同で進めている。アイテニアム搭載機が本格的に普及し始める来年に向けて、マテリアルスタジオの機能強化も急ピッチで行われるとみられる。