TSTがシュレーディンガーの新製品を発売

統一GUI「Maestro」を搭載

 2000.04.17−帝人システムテクノロジー(TST)は、米シュレーディンガー社が開発したコンピューターケミストリーシステム(CCS)の最新版「Jaguar 4.0」と「MacroModel 7.0」の販売を開始した。新しい計算手法の導入で計算対象を広げたほか、サポートするプラットホームを大幅に拡大した。とくに今回、両システムの統一GUI(グラフィックユーザーインターフェース)である「Maestro」が完成したことが注目される。ウィンドウズライクなプルダウンメニューとダイアログボックスにより、マウスだけでほとんどの操作が可能であり、ユーザー層が一気に広がると期待される。

 シュレーディンガーのJaguarは、分子の電子状態をシミュレーションする量子化学プログラムだが、これまでは簡単な入力エディターしか付いておらず、計算結果は数字で判断するか、MSIの「Cerius2」を使って可視化するしかなかった。一方のMacroModelは、1998年8月に米コロンビア大学からクラーク・スティル教授らのグループを含む開発陣と販売権をそっくり買収したもの。それ以降、シュレーディンガーは共通のグラフィック環境を開発するプロジェクトを進めてきていた。

 今回完成した統一グラフィックシステムの名称がMaestro。とくにLinuxで動作するため、プラットホームにコストパフォーマンスに優れたパソコンを利用することができる。操作はマウスとプルダウンメニューだけで行え、計算システムをメニューから選択することでJaguarでもMacroModelでも自由に使い分けることが可能。

 計算設定のダイアログボックスにはあらかじめ標準的な値が埋め込まれているので、初心者にも使いやすい。キーカスタマイズの設定や内蔵されたスクリプトエディターによる自動処理など、パソコンソフトのような使い勝手の良さを持っている。その一方、計算化学のプロのために、UNIXのコマンドラインからの操作もできるようになっている。

 MaestroはXウインドーをベースにしており、Linux用のGUIの種類には影響されない。TSTではレッドハットのLinuxで動作検証中だが、日本語のディストリビューションでもほぼ問題なく動作するという。プレマーケティングの段階では、やはりLinux上で利用できるグラフィック環境であるということで関心が高いという。

 現在、MacroModel 7.0には、Maestroと旧GUIの両方がバンドルされており、ソフト価格は550万円(アカデミック120万円)。Jaguar用のMaestroは5月−6月にリリース予定で、価格はMaestroを含むJaguarで450万円(アカデミック100万円)となっている。

 なお、Jaguar 4.0はランタノイドを含む触媒設計などに役立つ新しい基底関数CSDZのサポート、分子のpKa値を非経験的に予測する計算機能の追加などが行われた。MacroModel 7.0の方は溶媒効果を加えたたん白質の計算などに有効なOPLS-AA力場のサポートなどがハイライトとなっている。

 適応機種としては、SGI、IBMに加え、HP、コンパック(アルファ)、サンが加わり、ほとんどのメジャーなUNIXプラットホームを網羅した。Linuxを使えば、ハードはパソコンでOK。