TSTが九州工業大学開発の経皮吸収シミュレーションソフトを発売

経皮吸収薬物の皮膚内および体内動態を解析

 2000.06.21−帝人システムテクノロジー(TST)は、九州工業大学の東條角治教授らのグループが開発し、イーハイブ・コミュニケーション(本社・福岡市東区、平井良明代表取締役)を通して製品化された薬物の経皮吸収シミュレーションソフトウエア「SKIN-CAD」(商品名)の独占販売権を取得した。ウィンドウズ95/98対応のプログラムとして今夏から提供を開始する。特定の薬物の皮膚からの透過量や血中濃度の経時変化などを予測し、グラフ表示する機能を持つ。海外にもあまりみられないソフトであるため、TSTでは将来的に欧米市場での販売にも取り組みたいとしている。価格は年間使用料で150万円程度になる予定。

 SKIN-CADは、東條研究室において、帝人の研究所などもかかわって研究が行われてきたソフト。東條教授自身は経皮治療技術の研究が専門であり、その研究に必要なソフトとして開発された。製品化を行ったイーハイブ・コミュニケーションは東條研究室出身者などが設立したいわゆるネットベンチャーで、大学の後押しも受けているようだ。ウェブアプリケーションの受託開発などがメインの業務となっている。

 SKIN-CADについては、すでにDOS版は頒布されており、大学の施設を利用して講習会なども定期的に開催されている。TSTでは、グラフィック機能が追加されて使いやすくなったウィンドウズ版の正式製品化に合わせて販売権を取得したことになる。

 経皮吸収薬物の皮膚内および体内動態を解析するための汎用的な機能を備えており、TSTはこれを創薬支援向けコンピューターケミストリーシステム(CCS)のシリーズを構成する戦略商品として扱っていく。同社のCCSラインアップはほとんどが外国製品であるため、SKIN-CADを国産ソフトとして大きく育てたい考えだ。その一環で、海外への輸出販売も検討していく。

 SKIN-CADを利用するためには、あらかじめ医薬化合物を分析し、測定したlogP(水−オクタノール分配係数)などの物性値を入力情報として利用する。累積透過量や血中濃度の経時変化などを予測することができる。化学構造からlogPを推算するプログラムを使って、その計算結果を入力に利用すれば、研究段階での候補化合物の評価にも役立つ。

 現在、経皮吸収薬剤は貼付剤やゲル剤が多く、最近ではホルモン剤やインスリンなどの新しい投薬技術としても研究が行われているという。また、化粧品などでは逆に吸収されにくい成分を探したいというニーズもあるようだ。