富士通がネットラボラトリーを本格始動

急ピッチでサービス/コンテンツ拡充が進む

 2000.07.17−富士通が、化学・医薬・材料などの研究者に役立つコミュニティーとして開設したインターネットポータルサイト「ネットラボラトリー・ドット・コム」(http://www.netlaboratory.com)が6月から正式にサービスを開始し、1ヵ月を経てコンテンツも急速に充実してきた。今年の2月に仮オープンした際にはバイオインフォマティクス関連の話題だけを扱っていたが、現在では「バイオインフォマティクス」「マテリアル」「CAE(コンピューター支援エンジニアリング)」「HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)の4つの“研究室”が確立、7月14日からは各研究室に属さない話題を扱う「サロン」もオープンした。各研究室ごとにコーディネーターを置き、さらに内容の充実に務めるとともに、知的情報ナビゲーターや知的情報検索など先端的な情報技術も導入しながら世界中の科学者や技術者、そこに向けたサービスを提供する企業や起業家などが広く集まるサイトに育て上げていく。

 現在、「ネットラボラトリー」には4つの研究室があり、それぞれに「ニュース」「パブ」「メッセ」「キャンパス」「レンタル」「クラブ」「テーラー」「サークル」「トレード」「ライブラリー」「オフィス」の部屋が設けられている。各サービス/コンテンツへは研究室と部屋のマトリックスで移動でき、例えばニュースの部屋にいるままで、マテリアル研究室からHPC研究室に移ることが簡単に行える。

 利用するためには会員登録をする必要があるが、現在のところは無料。ただ、今後コンテンツを充実させる過程で有料のプレミアム会員制度を導入する。会費の徴収方法などが決まっていないため、時期はまだ未定だが、年間1万円程度の会費にする予定だ。例えばショッピングなど、コンテンツの内容によっては、別途費用がさらに発生する可能性もある。会員数はいまのところ数100人のレベルだが、4−5年後には10万人規模の会員にしていきたいという。

 さて、各部屋のサービス内容だが、「パブ」はメンバーが自由に意見を交換し合うフォーラムを目指している。現在は各研究室のお知らせコーナーのようになっているが、フォーラムの内容や論議をある程度監督するいわゆるシスオペを置いて、メンバー同士が活発な活動を行えるようにしていく。上半期のうちには本格化させたい考えだ。

 「メッセ」は、ネットラボラトリーに賛同するベンダー、パートナー企業の情報発信、商品紹介などを行うコーナー。バイオインフォマティクス研究室には分析機器メーカーや試薬メーカー、専門書などの出版社など8社ほど載っており、それぞれのホームページに飛ぶことができるようになっている。マテリアル、CAE、HPC研究室は富士通製品および富士通マシン上のアプリケーションパッケージの紹介が中心。今後は、ISVの積極的な参加を募り、ソフトの展示や販売ができるようにしていく。

 「キャンパス」は、ソフトの講習会の案内などの情報を載せているが、将来的にはオンライン教育の仕組みを実現する。例えば、あらかじめ学習用のソフトをダウンロードしておいて、オンラインのガイダンスを見ながら学習のステップを進行させ、最後に実習結果を入力・送信して、のちほど講師からのコメントをもらうなどというやり方が考えられるという。例えば、分子シミュレーションのパラメーターの使い方を学ぶといった具合である。ただ、教材づくりはこれからの段階で、もう少し時間がかかりそう。

 「レンタル」は現在、バイオインフォマティクス研究室のみがオープンしており、バイオ実験支援サービス、バイオデータベース検索サービス、バイオ予想・解析サービス、創薬ソリューションサービスの観点から富士通のソリューション製品を紹介する内容となっている。本来は、コンピューターのハード・ソフトのリソースの提供と利用の仲立ちをする部屋を目指している。

 「クラブ」はまだ開設していない部屋で、有料のプレミアムユーザー専用となる予定。機能限定版や古いバージョンのソフトの無償ダウンロード、最新ソフトの有償ダウンロード(ショッピング)サービスをはじめ、Q&Aといった技術サポートを提供するなど、さまざまなサービスを検討している最中である。

 「テイラー」は、マテリアルとCAE研究室がオープン中で、富士通が提供するコンサルティングや解析委託などのサービス製品の紹介窓口となっている。これからは、パートナー企業のサービス製品もここに含めていく計画だ。

 「サークル」もまだオープンしていない。限定されたユーザーだけが利用できる専用会議室のイメージで、そのサークルのメンバー以外は入れないようになっている。例えば、産学の共同研究などで利用することが可能。現時点でサービス可能な体制となっており、メンバーから具体的な要望があればいつでもスタートできるという。

 「トレード」も準備中の段階。パートナー商品のオンラインショッピングを実現する予定で、出店パートナーを募ったり、決済方法をどうするかを検討したりするなど、下半期にはオープンできるように急ピッチで作業を進めている。専門書などの書籍販売を行う案もあるようだ。

 「ライブラリー」は、各研究室に関連したインターネットリンク集で、日米欧の関係省庁、主要研究機関、学会、企業、公共データベースサービス、ニュースグループ、オンラインジャーナルなどのディレクトリーが収録されている。将来はここに情報検索機能を組み込む予定。

 「オフィス」は、起業家を支援する部屋で、法律的な問題や事務処理の支援など、いわゆるインキュベーション的なサービスを行うことを目指している。現在はまだ計画中の段階である。

 新しくオープンした「サロン」だが、各研究室に属さない情報を扱う特別室のようなものであり、現在はネットラボラトリーを紹介したメディアの記事、また独自の視点からより抜きニュースを選定する「橋本さんの部屋」などのコーナーで構成されている。今後どんなコンテンツが飛び出すか、興味深い。

 このように各部屋の概要をざっとみてきたが、いずれにしても今後半年ほどで内容を大幅に充実させていくという。

 さて、ネットラボラトリーの新しい要素として採用を検討しているのが「知的情報検索技術」である。これは、富士通グループの新聞記事などのコンテンツプロバイダーであるジー・サーチの技術をベースにするもの。一般紙や専門紙に掲載された毎日の大量の記事を、設定されたテーマごとに自動的に分類してインデックスを作成する機能を持っており、利用者は業種や地域、テーマ、キーワードなどで欲しい情報を検索したり、サブカテゴリーを利用してさらに絞り込んだり、特定の記事の中からさらに関連情報を参照したりすることが可能。

 ジー・サーチで使われているものはビジネス寄りの分類になっているが、科学技術分野に対応したカテゴリー分けを行い、新聞・雑誌などの紙の情報と電子サイト内のオンライン文献などを含めて自動分類できるようにして、それをネットラボラトリーのライブラリーの部屋から検索できるサービスを提供する。時期は未定だが、プレミアムユーザー向けになる可能性が高い。

 もう一つ、導入を予定しているのは「知的情報ナビゲーター」。擬人化された猫のキャラクターが画面上に現われて、おすすめの情報のナビゲーションや操作のガイダンスをしてくれる。一種のお遊びのようなものだが、サイトに彩りを加えるマスコットとして人気者になるかもしれない。ネットラボラトリーは文字が中心でウェブページとして軽いのは良いが、やや画面の華やかさには欠けるからだ。この猫は、会員のプロファイル情報やサイトに訪れた履歴などを参照して、各ユーザーに合わせた適切なセリフを話すようになるという。ちゃんと音声でしゃべるのが特徴だ。ウェブエージェントと呼ばれる技術を利用しており、あらかじめユーザーのパソコンにキャラクターをインストールしておく必要がある。8月からキャラクターファイルがダウンロードできるようになる。ファイルサイズは約2メガバイト。