コンビナトリアル材料科学の独hteが日本でビジネス開始

不均一系触媒開発に特化、受託研究受注へ活動

 2000.09.07−コンビナトリアル材料科学とハイスループット実験(HTE)の専門技術会社である独hte社(本社・ハイデルベルグ、ディルク・デームート社長)が、日本国内におけるビジネスを開始した。とくに、新規の触媒開発にフォーカスしており、触媒研究のアウトソーシングサービスをさまざまな形で提供する。このほど、日本の大手化学・触媒メーカー7社、4つの大学・研究機関を個別訪問し、最初のプロポーザル活動を行った。従来の触媒開発は経験的な知識に基づいていたが、hteの手法は大量の実験をハイスループットで実施することにより、候補化合物の探索範囲を大幅に広げるというもの。国内にはない技術であり、大きな反響が予想される。

 同社は昨年6月から活動を開始した若い企業で、触媒の研究者・技術者、ロボットエンジニア、分析技術者、コンピューター科学者など専門技能を持つ33名ほどの社員を擁している。今回、事業を世界規模に拡大するに当たって、コンビナトリアルケミストリー技術で有名な米ファーマコピアのジョン.M.ニューサム元CSO(最高科学責任者)をグローバルビジネス開発の責任者に迎えており、米カリフォルニア州サンディエゴの拠点から直接日本市場にもアプローチしていくことにした。

 基本的には、ユーザー企業との受託研究契約が中心になるため、秘密保持の観点からも代理店などは置かない予定。ただ、ファーマコピア時代からニューサム氏と関係の深い菱化システムが問い合わせ対応などの窓口を務める可能性があるようだ。

 さて、hteの触媒開発のプロセスは、まずコンビナトリアルケミストリーの考え方で触媒分子の構造修飾を組み合わせ的に大量に行い、ロボット合成機などを使って巨大な化合物ライブラリーを構築する。その上で、実際に反応器を並列的にたくさん用意して、数10個の触媒の反応性を同時に評価。これを24時間/7日間のハイスループット実験で実施し、得られた大量のデータを収集・解析して、有望な化合物を絞り込んでいく。

 従来のやり方では経験的な知識の範囲内で限定されたパラメーター空間を探索することになる。これに対し、HTE技術を使うアプローチは新しい物質を発見する可能性を格段に広げることができるという。

 現在は不均一系触媒を専門に扱っているが、石油精製や石油化学、ファインケミカル、環境など多方面のアプリケーションが対象となっている。

 このために必要なソフトウエア技術は、コンピューターケミストリーシステム(CCS)大手の米MSI(ファーマコピアの子会社)との共同開発で構築しており、すでに「hteWorks」の名称で社内のNOx除去触媒開発プロジェクトで実際に利用しているという。このソフトは、将来的にはMSIから製品化される予定だが、現段階のシステムは触媒開発に特化したカスタムモデルであり、汎用的な商品に仕上げるのはかなり時間がかかりそうだ。

 hteは現在、BASFと米シェブロンから大口の契約を受注しているが、触媒分野では日本の化学メーカーも大きなビジネスを行っているため、日本市場を非常に有望視している。ニューサム氏は「HTEの話しを持ち出すと、3年前は米国でもまったく相手にされなかったが、最近になって前向きに取り組む方向に変わってきた。医薬分野などでも研究をアウトソーシングする例が急増しており、外部の技術を利用した方がリスクが低く、成功する可能性も高いと考えられるようになってきた。HTE技術は日本の化学会社の研究を変えると思う」とラブコールを送る。実際、今回の訪問でも好感触を得たという。

 なお、同種の技術領域では1995年に設立された米シミックスが存在しているが、同社はいまのところ日本国内では目立った動きをしていない。また、シミックスは触媒のほかにもDNA分離膜やX線蛍光体、熱伝導材料、燃料電池、電極材料などの分野にも取り組んでおり、触媒専門に特化しているhteとは異なっている。