KGTが非経験的分子軌道ソフト最新版を発売

Q-Chem2.0で触媒など材料設計分野が対応可能に

 2000.09.25−ケイ・ジー・ティー(KGT)は、米キューケム社の非経験的分子軌道法ソフト「Q-Chem」(商品名)の最新版2.0を10月から販売開始する。とくに今回、計算手法としてECP(有効コアポテンシャル)などに対応し、金属を含む系を分子軌道計算(MO)で扱うことが可能になった。このため、アプリケーションの用途が広がり、触媒など材料設計分野の研究への応用が期待されるという。対応するOS(基本ソフト)はUNIXで、ソフト価格は新発売キャンペーンとして、当面は民間向け50万円、アカデミック35万円で販売する。国内での出荷開始は11月から。

 米キューケムは、MOプログラム開発でノーベル賞を受賞したジョン.A.ポープル教授をはじめとする技術陣を抱えるベンダーで、今回のQ-Chem2.0でもMO計算の最新アルゴリズムを製品に反映させることに力が注がれている。

 とくに、これまで生体系を主体としていた基底関数に加えて、ECPをサポートしたことにより、触媒などの材料系への適用範囲が広がった。ポープル教授らが開発した相対論効果を考慮した計算も可能になったので、重金属を含む系への対応(重金属は原子核が重くなるので相対論的効果が無視できなくなる)も行える。

 また、ハートリー・フォック計算では、大規模分子系に対応できるローカルMP2法を盛り込んだ。分子の中の電子相関が強い部分だけを計算する手法で、MP2よりも100倍高速だという。計算時間の点でMP2が使えないため、精度の劣るDFT(密度汎関数法)などを利用していたユーザーには注目されそうだ。さらに、CCSD/QCISD、MP3/MP4、CASSCFなど、より正確な電子相関を含めた計算を行うための手法を取り入れた。

 これにより、チーグラー・ナッタ触媒やカミンスキー触媒などの大きな触媒分子も、非経験的なMO計算で解析できる道がつけられたことになるという。

 そのほか、励起状態の計算では、時間依存DFT法、CC(カップルドクラスター)法を新たにサポート。DFTによる解析的二次微分も可能になり、化学反応を予測する際に有効な振動計算などが行えるようになった。

 Q-Chemはソルバーがメインの製品なので、グラフィックユーザーインターフェース(GUI)には「HyperChem」(加ハイパーキューブ)などの別ソフトを使用している。ただ、今回のQ-Chem2.0からLinux版もサポートされるため、KGTではLinux上での専用GUIを新たに自社開発し、Q-Chem2.0とのセット販売を行う予定。同社がライセンスを保有しているグラフィックツール「AVS」を応用して開発中である。