TSTが米シュレーディンガーのADME予測ソフトを発売

膜透過係数Caco-2など7つの物性を予測

 2000.08.01−帝人システムテクノロジー(TST)は、開発中の化合物が医薬品としてふさわしいかどうかを判断するための物性予測ソフト「QikProp」(商品名)を8月末から発売する。米シュレーディンガー社が開発したソフトで、ADME(吸収・分布・代謝・排出)関連の7種類の物性を高速に予測できる。とくに、胃腸などの人の消化管からの吸収のしやすさをはかる基準となる膜透過係数“Caco-2”の予測機能があり、ファイザーなどの大手製薬会社で有効性が認められたという。UNIX、Linux、ウィンドウズで利用でき、ソフト価格は約200万円。

 QikPropは、シュレーディンガー社のサイエンティフィックアドバイザリーボードを構成する一人であるウィリアム.L.ジョーゲンセン教授(エール大学)らのグループが開発したもので、1時間に1万化合物以上を計算できる高速アルゴリズムが特徴。モンテカルロ計算をベースにした一種の統計処理によって物性値を導いているようだ。

 医薬品開発の場合、化合物としての生理活性がいくら高くても、体内における吸収性あるいは浸透性が低いと、医薬品としては使えないことになってしまう。実際、ファイザー社において開発の最終段階まで進んだ化合物も、40%はADME試験で落とされ、さらに11%が動物実験による毒性評価で失格になるという。このため、開発の早い段階でADMEや毒性を予測できれば、期間と費用の大幅な削減に寄与できる。このため、最近では薬物の体内動態の物性シミュレーションを行うことに注目が集まってきている。

 QikPropで予測できる物性は、オクタノールと水の分配係数LogP、水溶解性LogS、Caco-2細胞透過性、血液/脳バリア透過性LogBB、さらに溶媒中での自由エネルギーとして水とオクタノール、ヘキサデカンを扱うことができる。

 ただ、現状では相関式の精度が甘いものもあり、実際の試験値と同じ予測数値を求めるというのではなく、全体の傾向を見出したり、候補化合物をふるい落としたりすることに有効に利用できそうだ。

 システムはUNIXのコマンドラインからの操作が中心で、UNIXに不慣れな人にはたいへんそうだが、ウィンドウズ版には簡単な画面操作機能が付属する。計算結果はCSV形式で出力できるので、エクセルなどの表計算ソフトに読み込んでしまえば、データ加工は容易である。また、シュレーディンガーでは、計算化学システム「Jaguar(ジャガー)/MacroModel(マクロモデル)」用の新グラフィックソフト「Maestro(マエストロ)」をQikPropでも使えるようにする計画を進めており、近く対応できる予定だという。