米アスペンテック:クラインシュロウト上級副社長インタビュー

eマーケットプレースはパブリックからプライベートへと転換

 2001.03.16−プロセス産業専門IT(情報技術)ベンダーの米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、化学品の電子商取引をインターネット上で提供する「e-Chemicals」(eケミカルズ)を買収した。パブリックなeマーケットプレースとしてサービスを継続すると同時に、この技術を生かしたプライベート向けのeマーケットプレースとしても販売を行っていく。インターネットビジネスグループ担当のフランク.J.クラインシュロウト上級副社長に、今回の戦略の背景と最近のeビジネスの動向について聞いた。

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 同社はプロセスシミュレーターを中心としたエンジニアリングツールのベンダーとしてスタートし、化学プラントの高度制御やオンライン最適化、サプライチェーンマネジメント(SCM)まで、プロセス産業の総合的なITニーズに応えるだけの製品群を整えてきている。

 クラインシュロウト上級副社長は、「ベクテルのPIMS、チェサピークのMIMIを買収してSCM市場に進出したが、これら2つを合わせると、石油・化学業界では50%シェアを占めることになる。さらに、昨年6月のぺトロールソフトの買収により、石油製品の原料からガソリンスタンドまでの総合SCMのソリューション提供が可能になった。12月にはブロナーを買収したが、これは製鉄・非鉄金属業界向けのSCMでトップシェアの製品だ。SCM分野の売り上げは、1998年当時は2,000万ドルだったが、昨年は7,000万ドル、2001年6月期には1億4,000万ドルに拡大すると見込んでいる」と説明する。

 クラインシュロウト上級副社長が担当するインターネットビジネスグループは、SCM事業との関連でeマーケットプレースの重要性を認識した同社が昨年5月に設立した組織。2004年に10億ドルの売り上げ規模に発展させる計画で、これはその時のプロセス産業分野での市場シェアが50%であることを想定した数字だという。

 ところで、米国の化学業界eマーケットプレースは、Chemdexが閉鎖に追い込まれたのに続き、CheMatch、ChemConnectの両サイトも苦戦が伝えられる。そんななかでアスペンテックはeケミカルズを買収したことになる。

 「現在、eマーケットプレースは3種類に分けられる」とクラインシュロウト上級副社長。「eケミカルズを含むパブリックなマーケットプレースは、ビジネスモデルがうまく働いていない。売り手側からすると、製品の価格や品質・機能などが全部オープンになってしまうことが問題だ。個別のユーザーとの長年の関係の中身を公表することにもつながる。そもそも、化学産業の取り引きの80%は長期契約であり、スポットビジネスは少ない。パブリックサイトでの取引量は必然的に限定されたものになるだろう。もう1つはコンソーシアムタイプのマーケットプレースで、これは取り引き形態の決まっている企業間だけでやり取りをしたり、物流手段を共有したりする。ネット取り引きのトランザクションのチェックなどはあまり行わない。これも基本的に限定されたものだ」。

 3つ目は、プライベートなマーケットプレースで、今後はこれが増えていくという。「eマーケットプレースが新しい段階に入ると、売り手側と買い手側で同じ情報を共有し、統一された需要予測のもとで発注と納期回答、製品の出荷・配送までが一貫して行われるようになる。すでに、ICIやBPから受注して、システム構築に入った事例もある」と述べる。

 アスペンテックでは、eケミカルズのマーケットプレースを構成する20種類以上のシステムを組み合わせ、プライベート向けのソリューションパッケージとしてシステムインテグレーションを行って提供していく考えだ。基本となるSCMのエンジンにアスペンテックの技術を利用することにより、バックエンドの生産系システムとの親和性も高まるというメリットがある。「買い手側と売り手側のERP/SCMシステムがeマーケットプレースを通して直接会話できるようになる」という。