CCS特集:モデリング・計算化学系

ナノシミュレーション

 2001.05.25−ナノシミュレーションは、分子動力学法(MD)を専門とする独立系ベンダーで、テーマを絞り込んだ共同研究などのスタイルで高度な技術サービスを提供している。とくに、液晶材料の物性予測で成果をあげており、独自のMDプログラム「NanoBox」を利用して液晶の基本物性である“回転粘度”、“フランク弾性定数”、“相転移温度”の予測に成功した。現時点ではまだ計算時間がかかり過ぎるが、2−3年のうちには実用域に入ってくるという。

 MDは、ニュートンの運動方程式をコーディングするという意味では、それほど複雑なものではないが、実際の計算対象に合わせて解析の方法などがいろいろに異なってくるという面もあり、現時点ではCCSのなかでもやや敷居が高く使い手を選ぶ計算手法となっている。また、MDの計算ステップはフェムト秒単位であり、現実的な材料物性があらわれはじめる数10ナノ秒のオーダーまで計算を進めるには、コンピューターの処理速度が決定的に足りないという問題もあった。

 同社が計算に成功した3つの液晶特性も、計算量が膨大になり過ぎてこれまで実現していなかったもの。なかでも回転粘度は独メルク社との共同研究によるもので、2−3日間で評価できるところまで計算速度があがってきている。実際に合成する前の計算機実験に利用できるレベルに近づいているという。

 フランク弾性定数と相転移温度は数10ナノ秒のスケールの計算が必要なため、いまは数ヵ月を必要とする。しかし、2−3年のうちにはこれもかなり定着すると同社ではみている。

 一方、ポリマー分野でも塗料や接着剤に使われる多官能型の分子シミュレーションに取り組んでいるが、こちらはまだまだ基礎研究の色合いが濃い。溶解度を計算するなどテーマを絞って息長く計算を続けていく考えである。