NECが生命情報科学研究センターとバイオインフォで共同研究

たん白質同定アルゴリズム、立体構造予測など2年間で

 2001.08.07−NECは8月6日、産業技術総合研究所生命情報科学研究センター(CBRC)とバイオインフォマティクスの共同研究を行うと発表した。国内最大規模のクラスターシステムを利用し、たん白質を同定するアルゴリズム研究およびたん白質立体構造予測の研究を行っていく。CBRC内にNECの研究分室を設け、2年間をめどに集中研究を実施するもので、ポストゲノム時代のプロテオーム研究を加速させる技術開発としても注目される。

 CBRCは、IT(情報技術)を駆使したバイオインフォマティクス研究の公的中枢拠点として今年の4月に設立された機関で、民間企業と正式に共同研究を行うのは今回が初めて。一方のNECは1985年からバイオテクノロジー研究を行っており、昨年9月にはバイオIT事業推進室を設けて、ソフトウエア/ハードウエアプラットホームの両面から事業開発を進めてきている。

 今回の共同研究の第1のテーマは、プロテオーム解析支援のためのたん白質同定アルゴリズム。二次元電気泳動で分離した試料のスポット画像データをもとに、発現しているたん白質を同定したりサンプル組織間の比較を行ったりする効率的なアルゴリズムを開発していく。細胞組織内で発現しているたん白質を網羅的に解析する手法の効率化・高精度化に道をつける技術で、プロテオーム研究のスピードアップに寄与する。

 2つ目のテーマは、アミノ酸配列からたん白質の立体構造を高精度で予測する手法の研究である。最近、X線結晶解析やNMR(核磁気共鳴)などの実験的手法でたん白質立体構造の解明が進んではいるが、10万以上あると考えられているヒトの体内で働くたん白質のうち、立体構造がわかっているのはわずか数%にすぎないという事実がある。このため、コンピューターシミュレーションによる予測手法が確立されることには大きなインパクトがある。

 また、これらの研究を実施するプラットホームとして、NECではIAサーバー「Express5800シリーズ」を520台(1,040プロセッサー)接続した大規模PCクラスターシステムを構築した。理論性能は967.2ギガFLOPS(毎秒9,672億回の浮動小数点演算)に達する。同社が、7月に理化学研究所・ゲノム科学総合研究センター(GSC)に納入したシステムは232プロセッサー構成であり、今回のものはかなり規模が大きい。バイオインフォマティクス領域では、国内最速のシステムになるとしている。