米アスペンテック:ラリー・エバンスCEOインタビュー

バリューチェーン統合で企業全体最適化に力

 2001.08.29−プロセス産業専門のソリューションプロバイダーである米アスペンテクノロジー社(アスペンテック)は、資材・原料調達から生産、販売・物流まで企業全体のバリューチェーンを最適化する総合体系「アスペンテック・プロフィットアドバンテージ」を推進している。ERP(基幹業務パッケージ)やSCM(サプライチェーンマネジメント)、eコマースなど、ユーザー各社がここ数年導入に取り組んできたシステム群を有機的に統合することで新しい価値を生み出すことができる。先ごろ来日したラリー・エバンス会長兼CEOに最近の戦略や市場動向などについて聞いた。

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  − アスペンテックは化学工学のエンジニアリングソフトの提供にはじまって、プラントの高度制御や統合情報化、最近ではSCMやeマーケットプレースの構築までソリューションを広げてきましたね。

 「拡大戦略を取りつつも、化学や石油などのプロセス産業にフォーカスしているのが当社の特徴だ。現に、プロセスシミュレーターなどのエンジニアリングツールでは40%、化学・石油産業向けSCMでは50%のシェアを持っている」

 「プロセスエンジニアリングを主体にしていた時代に、周辺技術を統合してプラントの稼働効率を最大限に高める“オンラインオプティマイゼーション(オンライン最適化運転)”に取り組んだが、いまわれわれが目指しているのは企業全体を最適化し、バリューチェーンの最大化を図る“エンタープライズオプティマイゼーション”で、そのための具体的なソリューションとして、各種ソフトウエアパッケージやコンサルティングサービスを一体にした“プロフィットアドバンテージ”を打ち出した」

  − どんな効果がありますか。

 「サプライヤーからカスタマーまでをつなぐバリューチェーン全体を最適化するので導入効果は非常に高い。生産効率の改善と品質向上、顧客サービスの充実で年間売り上げを4−6%向上させられる。同時に原材料調達の最適化や物流・設備面の効率化などを通し、5−10%のコスト削減が見込める。資産の有効活用も図ることができるようになる」

  − 景気後退が深刻化するなかで市場の様子はどうですか。

 「ドットコムバブルの崩壊で化学・石油関連のeマーケットプレースの立ち上げはややつまずいたが、悪いのはパブリック型でプライベート型のマーケットプレースはうまくいっているようだ。景気全体の先行きは心配だが、いまのところ化学産業はそう悪くはないし、IT(情報技術)投資には依然として意欲が高い」

  − 化学業界におけるeコマースの状況はどうでしょう。

 「いまは、すべての取り引きの10%ぐらいだとみている。GEやICIなど非常に積極的に取り組んでいるところもあるが、他はまだ様子を見ているところだろう。化学業界は昔から保守的で先頭を切って何かをするということはないが、ひとたび取り組みはじめると安定的に進んでいくところがある。すでにeコマースも立ち上がりはじめていると思うので、2002年にはかなり進むだろう。原料事情もこの1年半ほどの間には好転して、eビジネスへの取り組みに弾みがついてくれればと願っている」

  − アスペンテックのこの6月期(2000年7月−2001年6月)の業績はいかがでしたか。

 「売り上げは3億1,060万ドルで、前年度比16%増を達成したが、eビジネスがらみの先行投資が大きく、トータルでは利益を出すことができなかった。この1年を振り返ると、アジアでのビジネスの好調さが目立った。日本市場の重要性もますます高まっており、日本企業にも当社のプロフィットアドバンテージで成功体験をしてもらいたい」