ノベル・ブレインシェア基調講演:ポール・スマート副社長

one Net戦略が拡大、eディレクトリーの具体的事例を強調

 2001.07.25−米国ノベル社のポール・スマート副社長(ネットディレクトリーサービス担当ジェネラルマネジャー)は7月24日、都内で開催されたデベロッパーズカンファレンス「ノベル・ブレインシェア」で基調講演を行い、同社がこの1年間積極的に推進してきた“one Net戦略”がどのような成果をあげてきたのかを具体的なユーザー事例などを通して紹介した。その技術基盤となっている「NDS(ノベルディレクトリーサービス)eディレクトリー」はすでに世界で1億6,300万人のユーザーがおり、最近の四半期では18%増と勢いを増していることを強調した。

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 スマート副社長は「ノベルのone Net戦略とディレクトリーの世界」と題する講演の冒頭で、ネット経済が出現する中でいろいろなネットワークが混在している現状を説明した。「ネット経済で企業が情報をやり取りする対象者は3種類に分けられる。すなわち、サプライヤーおよびディストリビューターに対してはエクストラネット、従業員に対してはイントラネット、一般顧客に対してはインターネットというようにネットワークがばらばらで、ハードもソフトも人的リソースも共有されていない。それを1つにするのがノベルのone Net戦略で、ネットワークにアクセスしてくる利用者を的確に見分けてふさわしいサービスを提供することができる」と述べた。

 具体的な事例の第1が英国防省。5,000のウェブサーバーを利用し、世界中から物資を調達するための電子カタログを作成した。ノベルの「iChain」を利用し、世界中のどこからでもブラウザーを使ってセキュアなアクセスができるようにしたという。

 2番目はある大手金融機関の事例。この金融機関は8,500人の顧客サービス担当者を置き、24時間体制で顧客の問い合わせに対応できる体制を築いている。その際、140種類のアプリケーションを駆使して顧客のポートフォリオを追跡するが、個々のアプリケーションにログインするためのIDやパスワードをオペレーターが覚え切れないという問題が発生し、パスワードの再設定に30分もかかることが顧客満足度に深刻な影響を及ぼしていたという。140のアプリケーションに対するIDとパスワードをNDSeディレクトリーに登録し、「NSSO(ノベル・シングルサインオン)」を利用することで、1回のログインで全部のアプリケーションをセキュアな形で利用できるようになり、年間600万ドルの経費削減にも寄与した。

 また、オランダのハーグ市は電子政府ソリューションを導入することで住民サービスを加速することに成功。eディレクトリーによって、ハーグ市民はインターネットを介してセキュアなポータルにアクセスすることができるようになった。例えば、固定資産税の通知に関して、住民は送られてきたパスワードを使ってセキュアなサイトにアクセスし、その評価額や税額を確認することが可能。その際、そのままオンラインで異議を唱えることもできる。「以前は、評価に不満があると、半日仕事を休んで長い行列のすえにやっと担当者に面会できた。いまはそれが瞬時に行える」とスマート副社長。one Netがビジネスプロセスを格段に加速する好例だと説明した。香港やカナダのトロント市も同様のシステムを導入しているという。

 もう1つの事例はカナダのモントリオール銀行。何度も合併して大きくなった銀行で、その結果、3万人の行員の人事システムが3つに分断されてしまっていたという。「この顧客が最も避けたかったのはシステムの再構築だった。次に合併したら、またやり直しになるからだ」とスマート副社長。eディレクトリーをベースに「DirXML」を導入することで、3つの人事システムに対して同期的にアクセスすることに成功したという。

 スマート副社長によると、NDSのライセンスは現在1億6,300万にのぼり、とくに企業利用でのシェアは88%に達する。インターネットでのシェアも41%からさらに上昇中だという。最近の3ヵ月間のライセンスの増加は18%、その前の3ヵ月間は9%増であり、勢いを増していると述べた。とくに、講演の最後にオープングループの「LDAP2000」、サン・マイクロシステムズの「SUNTONE」認定を受けるなど、ディレクトリーシステムとしての業界内での評価が高まっていることを強調した。