富士通がバイオインフォマティクス分野にSE部隊を動員

新たにソリューションサービスも提供へ

 2001.11.19−富士通は、バイオインフォマティクス事業に230名のSE(システムエンジニア)部隊を投入する。計算科学技術センターの既存組織の一部を新たにバイオ専門に割り当てるとともに、関連会社の富士通研究所内にも新組織を設立してバイオ関連のシステム化プロジェクトを担当させる。急速に拡大しているバイオインフォ需要を確実にとらえるための緊急体制を組もうというもので、IT(情報技術)ベンダーとして200名以上のSEをつぎ込むのは、世界的にみてもあまり例がない。少なくとも、コンピューターメーカーのサポート体制では世界一ということになりそうだ。

 富士通は1999年11月に「ライフサイエンス推進室」を設立して、生物・化学分野の研究開発支援システムを提供しているが、実際には20年近く前からこのビジネスを継続してきている。

 バイオインフォ分野では、公共関連などのプロジェクトのシステムインテグレーション(SI)や受託プログラム開発の業務が多く、これまでにゲノム機能解析システム、遺伝子データ/臨床データ管理システム、生物試験のサンプル/プレート管理システム、バイオ資源管理システム、配列情報のアノテーションシステムなどの開発、大規模バイオデータベースの運用サポートなどの実績がある。また、JBiCや新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の受託研究のほか、国内の大学・民間企業との共同研究プロジェクトも数多くこなしてきた。

 具体的に行っているのは、個々のユーザーの要求を仕様書にまとめ、プログラミング、デバッグ、テストを行い、納期通りにシステムをカットオーバーさせるという作業であり、SEの日常的な業務と何ら変わらない。その意味では、SEの物量作戦でプロジェクト遂行能力を向上させることが、富士通としての事業面の差別化ポイントになると判断した。

 今回、バイオインフォ専任のSE部隊に動員したのは、計算科学技術センターの知的システム研究部とHPCシステム部、さらに富士通研究所のコンピュータシステム研究所とナノテク研究センターの一部。

 それぞれ、既存の技術ノウハウをバイオインフォ分野に適用させることを狙いとしている。知的システム研究部はもともとデータマイニングや知識情報処理技術に取り組んでおり、それを遺伝子やたん白質情報のマイニングやアノテーションに応用する。HPCシステム部はスーパーコンピューターへのプログラムのチューニングや並列化を担当していた。今回からBLASTやFASTAなどのバイオ解析プログラムのチューニングに当たらせる。

 富士通研究所のコンピュータシステム研究所にも言語処理やデータマイニングの専門SEがいたので、それを配列情報の検索技術やシミュレーター開発に割り当てた。ナノテク研究センター内にはナノバイオグループを新設。ミュンヘン工科大学などの外国の研究機関と協力してプロテインチップ開発を推進していく。

 単にSEを頭数だけそろえるのではなく、得意技術をバイオインフォ分野に適用させた形で組織づくりを進める考え方がユニークだといえるだろう。

 さらに、同社ではこれまでの開発経験を踏まえて、新たにソリューションサービスにも乗り出す。第1弾として、ゲノム統計解析サービス、ゲノムデータマイニングサービス、アミノ酸シーケンス特性予測サービス、ファミリー分類解析サービスをラインアップした。

 ゲノム統計解析サービスは、SNPs(一塩基多型)などの遺伝子情報と臨床情報との関連を重回帰分析やX二乗検定などの手法を用いて解析し、報告書をまとめて提供する。費用は、被験者数200人、検査対象のSNPsが40程度で200万円。

 ゲノムデータマイニングサービスは、遺伝子発現プロファイルや遺伝子多型タイピングで得られた多量の実験データをマイニングし、それらのデータ中の特異な傾向を探り出して、わかりやすいグラフィックで結果をまとめる。費用は、5,000件程度で200万円となっている。

 アミノ酸シーケンス特性予測サービスは、FASTA形式のアミノ酸配列データを預かり、二次構造や疎水性・親水性、柔軟性、抗原決定基などの予測を行い、CSVファイルで提供する。アミノ酸配列40程度の規模の場合、費用は200万円。

 ファミリー分類解析サービスは、FASTA形式のアミノ酸配列をもとに、膜貫通アミノ酸の抽出、GPCR(Gたん白結合型受容体)の判定、酵素分類などの有用なファミリー抽出を行って、結果をCSVファイルで提供する。費用は、対象アミノ酸配列が500個程度で1件当たり200万円となっている。

 このほかにも、さまざまな要望に応えることができるという。今後、サービスメニューを随時拡大させていく計画である。