日本MDLが独ライオンのADME予測ツールを発売

臨床データを利用した精密モデル、消化管吸収性・肝代謝を予測

 2001.11.16−日本MDLインフォメーションシステムズは、米MDLと独ライオンバイオサイエンスとの提携に基づき、ADME(吸収・分布・代謝・排出)予測ツール「iDEA」(商品名)の国内での販売活動を開始した。ライオンが今年の3月に買収した米トレガバイオサイエンスの製品で、コンソーシアム形式で昨年に開発されたもの。創薬研究の初期段階の化合物ライブラリーデザインから、非臨床試験に入るフェーズまでの幅広い過程で利用することができる。ウェブ環境で運用でき、サン・マイクロシステムズのサーバーがバンドルで提供される。価格は5ユーザーライセンスで年間2,700万円。

 iDEAは、シェーリングプラウ、ジェネンテック、スミスクライン−ビーチャム、パーク・デイビス、ジョンソン&ジョンソンなどの6社が参加したコンソーシアムでの実際の化合物データや臨床データをもとにして開発された。結果的に薬にならなかった化合物の貴重な情報も含まれており、幅広い化学的空間を網羅したデータセットに基づいている。

 一般的には、“リピンスキーのルール”を用いて医薬品としての吸収性を評価するが、このルールではスコアが低くても実際には吸収性が良かったり、逆にルールに合致していても吸収性の悪いものもある。iDEAに利用されたデータセットはこれらを幅広く含んでいるのが特徴となっている。

 システムは大きく2段階で利用でき、創薬の初期段階のライブラリーデザインの際と、動物実験に進む前後の段階での探索ADMEに役立てることが可能。候補化合物が医薬として望ましい物性を備えているかどうかを実験の前に評価できるので、新薬開発の費用と時間の削減に寄与する。

 ライブラリーデザインに役立つのは、Caco-2細胞透過性と人体への吸収性予測の機能。2次元構造式をもとにCaco-2予測値と吸収性の高さ(3段階評価)を示してくれる。構造式はスマイル形式で入力され、一度に125化合物の情報を処理することができる。ライブラリーに含める化合物の部分構造を修飾したり、基本骨格を見直したりしながら、確率の高いライブラリーを設計するのに用いることが可能。

 一方、探索ADMEで利用する吸収予測と代謝予測にも、メンバー企業から実際の臨床データが提供された。精密な生理学的吸収モデル、生理学的代謝モデルを構築するため、前者は72化合物、後者には64化合物から得た情報が盛り込まれている。

 経口投与された薬物は、消化管で吸収され、肝臓での代謝を乗り切ったのちに、初めて医薬品として作用する。このため、消化器官の各部位の溶解性や透過性、表面積、腸内移動速度などをパラメーターに組み込んだ吸収モデルに対して、インビトロ試験で測定したCaco-2透過性データ、溶解性データなどを入力することで、濃度や絶対量などの時間変化を精密に予測する機能がある。次に、消化管からの吸収率やたん白質結合率などを代謝モデルに当てはめることで、その薬物の代謝特性を予測することが可能。

 この時に利用するインビトロデータは、試験条件やプロトコルなどによって値がばらつく可能性がある。できるだけ、モデル構築に使用したデータセットと整合性を取ることが理想であるため、ライオンでは今回のインビトロ試験のプロトコルの詳細情報をユーザーリファレンスとして提供している。日本MDLでは、こうした技術サポートを含めて、十分な体制を国内でも整えていく計画である。