CTCLSがグリッドコンピューティングで初の商用システム

米ブラックストーンと提携、ライフサイエンス分野に拡販

 2002.02.19−CTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、科学技術分野におけるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の次世代技術として注目されている“グリッドコンピューティング”で、世界初の商用システムをゲノム解析などのライフサイエンス市場向けに発売する。米国ブラックストーン・コンピューティング(本社・マサチューセッツ州、ブライアン・リッチー社長兼CEO)が開発したもので、CTCLSではアプリケーションを熟知した専門コンサルティングを付加する形で提供。万全の技術サポート体制を敷き、確実な普及を目指していく。

 グリッドコンピューティングは、ネットワーク上の多数のコンピューターを結びつけて、トータルで巨大な処理能力を実現しようという考え方。最近ではクラスターシステムが普及してきているが、クラスターでは一般にOS(基本ソフト)やハードウエアが同一でなければならないなどの制約があるのに対し、グリッドコンピューティングは完全に異機種が混在した環境を束ねて1つのシステムとして働かせることが可能。クラスターよりも高いレベルでリソースの分散と共有を実現する。この分野では、インターネットを通じて家庭などのパソコンの空いているCPUパワーを拝借して暗号解読のプロジェクトを推進している「distributed.net」、地球外生命体探査の科学実験を展開している「SETI@home」などのプロジェクトが知られている。

 グリッドコンピューティング自体は研究段階の技術がほとんどだが、ブラックストーン社の技術は商用のシステムとして米国で10社以上の導入実績があり、バイオインフォマティクス分野ではヒトゲノム解析で有名な米セレーラ社にも採用されている。半導体設計分野でも多くの導入実績がある。

 具体的な製品は「PowerCloud」(パワークラウド)で、グリッドコンピューティングを実現するさまざまな機能を提供するミドルウエア製品群となっている。動的にコンピューティングリソースを配分する「PowerCloud Machine Allocator」、ライセンス配分を行う「PowerCloud Shared Resource Allocator」、分散されたデータを管理する「PowerCloud Data Balancer」、稼働状況をリアルタイムに把握するための「PowerCloud Monitor」、パフォーマンス解析などに役立つ「PowerCloud Reports」−から構成され、ユーザーは大規模な計算を分割して行わせることで高速処理のメリットを享受できる。

 ブラックストーン社によると、ホモロジー検索の定番ツールである「BLAST」の実行において、2時間11分37秒かかった処理が、PowerCloudで最適化することにより10分3秒へと13倍の高速化が実現できた事例がある。このケースでは100数10台のパソコンが利用されたが、CPU使用率はPowerCloudを利用することで5−7%だったものが、50−70%へと高まり、リソース配分の効率の高さが実証されたということだ。アプリケーションの統合が行いやすく、運用管理も簡単だという特徴もある。

 ただ、現時点ではアプリケーションを熟知した専門的なコンサルティングによってシステムの構築から運用までがサポートされる必要がある。そこでCTCLSでは、ユーザーの手持ちのコンピューター資源の把握と現状分析からはじまって、ターゲットアプリケーションの拡張と最適化、インストールやセッティングまで、サイエンティフィックなサポートを提供していく。プロジェクトの費用は1,500万円からとなっている。