経産省・土井プロジェクトの「OCTA」が完成

4月からオープンソースとして提供開始、商用化も計画

 2002.03.07−経済産業省の大学連携型プロジェクト「高機能材料設計プラットホーム」(通称・土井プロジェクト)で開発されてきた高分子材料設計支援システム「OCTA」が完成した。原子レベルのミクロな世界と、実際の工業材料としてのマクロな世界との中間に位置する“メソ領域”を解析するためのソフトウエア体系を世界に先駆けて確立、実用的なシミュレーションシステムに仕上げた。4月からオープンソースとして広く一般公開するほか、メンバーの1社だった日本総合研究所を通して商用化に向けた開発作業もスタートする。OCTAが産業界でどのように活用されるか、今後が注目される。

 土井プロジェクトは、、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から化学技術戦略推進機構(JCII)が委託を受けたかたちで実施されたもので、名古屋大学の土井正男教授のもとに参加企業11社から派遣された研究員が集まって開発を進めた。プロジェクトは3月末で解散されるが、残りの期間にメンバーは米英独仏伊蘭など各国10数ヵ所の大学・研究機関を歴訪し、システムへの支持を訴える予定。

 コンピューターケミストリー分野では海外での使用実績が重視されるためで、まずは高分子化学の世界的な研究グループにOCTAを利用してもらうことを目指していく。このため、マニュアルなどのドキュメント類は最初からすべて英語で作成しており、プログラム自体も英語がベースになっている。

 OCTAには、ユニバーサルなグラフィック環境を提供する「GOURMET」に加え、シミュレーションエンジンとしては粗視化分子動力学の「COGNAC」、レオロジーシミュレーター「PASTA」、動的平均場法の「SUSHI」、多相構造/分散構造シミュレーター「MUFFIN」の4種類が標準で含まれている。プログラムとドキュメントの総量はCD-ROM2枚分となっており、4月1日からホームページ(http://octa.jp)で無償ダウンロードできる。

 基本的には、これらのリソースはすべてオープンソースとして公開され、営利目的で再配布する以外はプログラムの改変・拡張・流通も自由に行える。ホームページも、利用者同士の情報交換の場として解放する。

 これと並行して、日本総研のもとで商用化プロジェクトが進行する。同社はメンバーの1社としてGOURMETの開発を担当してきており、他の計算エンジンを統合する目的でのXMLへの対応、標準的なスクリプト言語Parlのサポート(現在はPythonでスクリプトを記述しなければならない)などを行ったうえで、商用パッケージ化を図る模様。ただ、商用版OCTAの詳細はいまだ明らかではない。

 土井教授らの研究グループは、プロジェクト解散後も関連する研究テーマを展開させつつ、システムの普及を側面的に支援していく考え。土井教授はOCTAの完成に当たり、「材料設計のコンピューター化はグランドチャレンジである。その方向づけをし、遠大な道のりのスタートを切ることを可能にしたのが今回のOCTAだといえる。現時点では計算による限界もあり、理論上の制約やシステムの特性をよく理解したうえで、うまく活用してほしい。長期的にOCTAが発展・成長し、世界中の研究者の協力でゴールに近づくことを期待したい」と述べている。

 経産省プロジェクトの成果物という観点からすれば、やはり国内の産業界でどれほど活用されるかがポイントであり、その状況次第では2004年度以降に第2期プロジェクトの話しがもちあがる可能性もあるだろう。