米トライポスが創薬支援で米ファイザーと多角的提携

ライセンス契約から共同開発、アウトソーシングまで総額1億ドル

 2002.01.10−大手コンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーの米トライポスは、米ファイザーとの間で新薬開発を支援するシステム技術の開発および提供で幅広い提携関係を結んだ。ファイザーはトライポスのCCS製品を導入して利用するとともに、全社的なCCS利用環境のポータルシステムを共同で開発。さらに、研究用の化合物ライブラリーを質・量ともに拡充させるプロジェクトをトライポスにアウトソーシングする。トライポスにとっては、総額で1億ドルを超えるプロジェクト受注となる。

 今回のファイザーとの契約は大きく3つの部分からなる。1つは、CCSパッケージの複数年にわたる数100万ドルのライセンス契約。2つ目は、3年間で数100万ドルの共同開発契約で、CCS技術を駆使するためのプラットホーム環境を構築する。3番目は創薬研究のための大規模/高純度化合物ライブラリーの構築で、4年間でこれだけで1億ドル以上の売り上げ規模に達するという。

 まず、今回のライセンス契約には統合CCSパッケージの「SYBYL」、化学データベース管理システム「UNITY」を中心とする製品群が含まれている。ファイザーは全世界の研究所でこれらのソフトを利用するが、とくにトライポス製品が得意とする仮想コンビナトリアルケミストリー技術を早期に活用していく考えだ。

 次に、3年間にわたって共同開発するのが「LITHIUM」と称するシステム。研究者のデスクトップから高度な計算サービスに簡単にアクセスできるようにする一種のポータル環境を実現するもので、モデリングや計算化学のエキスパートから、一般の化学者・薬学者、普段はあまりCCSを利用しない実験研究者にまで、それぞれの研究業務に応じた機能性を自在に提供することが可能。

 分子モデリングと解析のためのソフトウエア環境が含まれており、構造活性相関、薬物と受容体の相互作用解析、リード化合物の優先順位付け、ADME(吸収・分布・代謝・排出)特性の評価などを行うことができる。かつては専門の計算化学部門に頼まなければならなかったような解析が手元で行えるようになるため、研究開発の効率向上が期待されるという。

 LITHIUMの開発自体は1998年から行われてきており、今回のファイザーとの契約によって一般向けの商品化にも早期にめどがつきそうだとしている。

 提携の3番目の部分は、ライブラリー作成のアウトソーシングである。トライポスは「ChemCore」と「ChemSpace」といった最先端システムを利用してこのプロジェクトを推進する。 ChemSpaceは大量のバーチャルライブラリーを作成するためのシステムで、1時間に1億以上の大量の分子情報を超高速検索し、既知の反応と試薬のデータから合成可能な数10億におよぶ化合物情報のウェアハウスを構築する機能を持つ。

 ChemCoreは、傘下のファインケミカル会社であるトライポスレセプターリサーチ社が社内向けに開発運用していたシステムで、コンビナトリアルケミストリー/ハイスループットスクリーニング(HTS)の研究過程で生じたすべての情報を統合管理する機能がある。 ChemSpaceで作成したバーチャルライブラリーに対して、合成の実現性や妥当性、経済性などを評価するとともに、スクリーニング結果の解析まで一連の研究プロセスを完全にトラッキングできる。例えば、目立ったヒットがあった場合、その試料の合成段階まですべてのステップをたどることが可能。

 トライポスは、この両システムを利用することにより、ファイザーに対して高品質で高純度な化合物ライブラリーを作成して提供していくことになる。