サン・マイクロシステムズが最新版ソラリス9を提供開始

300項目を強化、ウェブサービス時代に向けてミドルウエア層を統合

 2002.06.14−サン・マイクロシステムズは、300以上の新機能を追加した最新版OS(基本ソフト)である「Solaris9」(ソラリス9)の提供を開始した。ウェブサービス時代に必要とされる一部のミドルウエア機能も含めてOS環境に統合したもので、アプリケーションの開発・実行環境である“SunONE”、運用・管理環境である“N1”との緊密な統合を実現したことが特徴。性能も改善されており、OSを入れ替えるだけで例えばアプリケーションサーバーの実効性能が34%向上するという。

 ソラリス9は、ウェブサービス技術を基盤にしたeビジネス環境を明確に意識して開発された。強化点は300項目におよぶが、とくに「SunONE環境の統合」「データ管理」「プロビジョニング」「サーバーの仮想化」「セキュリティ」「構成サービス」「高可用性」「性能」「互換性」−の9つがポイントになっている。

 最も注目されるのは、OSのフレームワークをミドルウエア層にまで拡張したことで、具体的にはJ2EE(Java2エンタープライズエディション)1.3に準拠した「SunONEアプリケーションサーバー7 プラットホームエディション」(旧iPlanetアプリケーションサーバー)と、LDAP対応の「iPlanetディレクトリーサーバー5.1」を内蔵した。これにより、Java、XML、SOAPなどのウェブサービス技術に基づいたアプリケーション構築が簡単に行える。

 この方針はマイクロソフトの戦略とも類似している。マイクロソフトのWindows2000はアプリケーションサーバーなどのミドルウエア層を包含する拡張的なフレームワークである“ドットネットフレームワーク”を具現化している。サンに代表されるUNIX/Java陣営は製品の選択肢は広いが、逆にOSとミドルウエアの実装がベンダーごとに異なってしまうため相互運用性に問題があるというのがマイクロソフト側の指摘だった。

 今回のソラリス9は、この点での回答を示しているともいえるが、逆にオープン性やアプリケーションサーバーベンダーとの関係に影響が出ることも懸念される。これについて、サンのアンディ・イングラム副社長(ソラリスソフトウエアマーケティング担当)は「今回内蔵したSunONEアプリケーションサーバー7は、J2EE環境のリファレンスと位置づけており、パートナー各社がそれぞれの製品で付加価値を主張できる余地は大きいと思う」とコメントした。

 また、ソラリス9ではメインフレームレベルの高可用性を実現したことも強調した。同社のクラスタリングソリューションである「Sun Cluster3.0」を完全にサポートしており、Oracle9iリアルアプリケーションクラスターにも最適化されている。

 性能面では、ソラリス8に比べ、アプリケーションサーバーの性能が34%、NFS性能が55%、DBMS性能が87%、Javaバーチャルマシンの実効性能が200%、OLAP性能が300%、ディレクトリーのリード性能が400%向上しており、既存のプログラムを書き換えたり再コンパイルしたりすることなく、OSを更新するだけでシステム全体のパフォーマンスを大幅に向上させることが可能。

 ソラリスの旧バージョンからの完全な互換性に加え、今回はLinuxとの互換性も高められており、LinuxのAPIやコマンド、ツール、ユーティリティをそのまま利用できるほか、Linux向けのアプリケーション開発を容易にするツールキットも提供していく。

 一方、システムの運用管理に向けた機能としては、仮想化とプロビジョニングが注目される。仮想化技術は「ソラリスコンテナ」と呼ばれ、1台のサーバー上で複数のアプリケーションを動かす際に、障害やセキュリティ、リソースなどをアプリケーションごとに分離する働きをする。動的物理分割機能と動的再構成機能が統合されており、システム全体の平均稼働率を大幅に高めることが可能。リソース最適化にも有効になる。

 プロビジョニングは、ソフトウエアのインストールやアップデートを容易にするためのもので、「ソラリスフラッシュ」などの機能から構成される。これは、OSやアプリケーション、各種設定情報などのシステム稼働環境全体のスナップショットを作成する機能。テストシステムで安定した環境を構築したあとに、そのスナップショットを本番システムにコピーするだけで簡単に本番稼働に移行させることができる。サーバー1台当たりに4時間かかっていたセットアップ作業を20分に短縮することができるという。

 なお、ソラリス9の価格とライセンス体系だが、バイナリーコードは有償のメディアキットかインターネットの無償ダウンロードによって入手可能。ライセンスはインストールするハードウエアに搭載可能なプロセッサー数に応じた価格が設定されている。ただし、シングルプロセッサーマシンに関してはライセンスは無料となる。ソースコードも今後公開される予定。

 イングラム副社長は、「今回のソラリス9はいろいろなツールや機能を統合したため、システム導入時のイニシャルコストを大幅に削減できる。例えば、eバンキングなどを例にすると、システム全体を構成するウェブ層で260万円、アプリケーション層で180万−2,170万円、データ管理層で70万−1,250万円、ディレクトリー層で200万−4,960万円の節約が可能だ。最大で8,440万円もお得になる。サンを使い続ければ、お金の節約にもなる」と論じた。

  Solaris9と各社のOSとの比較  
  Solaris9 HP-UX AIX-5L Windows2000
J2EEアプリケーションサーバー 同梱 × ×
ディレクトリーの統合 ×
エンタープライズレベルのファイアーウォール × × ×
資源管理の組み込み × ×
最高のスケーラビリティ × × ×
動的再構成 × × ×
互換性の保証 × × ×
    (資料作成:サン・マイクロシステムズ)