アスペンテックがハイプロテック製品との統合計画を公表

来年夏から3段階で統合化へ、シミュレーションエンジンは4種を継続

 2002.11.08−プロセス産業専門IT(情報技術)ベンダーの米アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、プラントにおけるあらゆるモデルデータを含む“プロセス資産”のライフサイクル管理を実現するエンジニアリングツール群である「アスペンエンジニアリングスイート」(商品名)の開発ロードマップを公表した。今年の6月に買収したハイプロテック製品群との統合がカギになっており、2003年夏から2004年末にかけて3段階に分けて統合化を進める。ユーザーの既存の投資を完全に保護しながら、統合製品への速やかな移行経路を提供していく考えだ。

 アスペンエンジニアリングスイート(AES)は、プラントの新増設などの設備計画から概念設計、プロセス工学、詳細設計、運用・保全までのライフサイクル全般にわたるエンジニアリングデータを統合的に扱う製品群。その中心は、Aspen PlusとAspen Dynamics、HYSYSとHYSYS Dynamicsと呼ばれる4種類のプロセスシミュレーションエンジンで、これらは開発と機能強化が継続される。

 開発計画の中には、HYSYSをベースにした石油産業の上流工程向けの拡張新製品、また方程式中心の技術を使ってAspen Plusのシミュレーションと最適化機能を強化した化学分野向け製品なども登場する。

 具体的には、11月以降にあらためてプランニングを進めるが、大まかな流れは決定している。まず、来年の夏にAES12.1とHYSYS3.2という形でそれぞれの製品をバージョンアップしたのち、来年末から2004年初頭にかけてAESにサービスパックを適用しハイプロテック製品群との統合を前進させる。

 この第2段階では、共同エンジニアリングツールAspen Zyqad+(ハイプロテックのAXSYSを統合)、バッチプロセスシミュレーターのAspen Batch+(ハイプロテックのBaSYSを統合)、概念設計のAspen Distil+(アスペンのSplitを統合)とAspen HX-Net(アスペンのPinchを統合)、機器評価と設計のAspen Tasc+(アスペンのHetranを統合)とAspen Acol+(アスペンのAerotranを統合)とAspen Teams+(ハイプロテックのTASCメカニカルを統合)−といった統合製品のリリースも開始する予定。基本的にはどちらかの製品をベースに、片方の同機能の製品を盛り込むようなやり方になるようだ。

 続いて、統合の第3段階は2004年末になり、AESは13.0にバージョンアップ。統合のレベルを一段と進めるとともに、スイートのコア製品の1つである物性エンジンのAspen Prop+が正式に提供される。これは、これはAspen PropertiesとハイプロテックのHYPROP IIIを統合強化したもので、これにより新しいAES製品群全体にわたって首尾一貫した物性値の使用が可能になる。

 もともと、アスペンテック製品は化学や医薬分野で、ハイプロテック製品はエネルギーや石油精製分野で多用されており、ユーザーのオーバーラップは少なかった。このため、ユーザーサーベイの結果でも、両社の製品の統合化を最優先してほしいという要望が支配的だったという。ユーザーの既存の投資を保護しつつ、片方の製品の優れた機能をスムーズに利用できるように提供することが基本方針となっている。