日本IBMがソフト専門コンピテンシーセンター

全IBMで初めて開設、ソフトウエア技術情報をパートナーに開示

 2002.12.13−日本IBMは11日、同社のミドルウエア製品を利用してシステムインテグレーション(SI)を行うパートナー企業が異機種混在のオープンな環境で動作検証やパフォーマンスチューニングなどを行うことができる専門施設「ソフトウエアコンピテンシーセンター」(略称・SWCOC)を東京・渋谷に開設した。先月、東京・晴海に設けたハードウエアのコンピテンシーセンターに次ぐもので、ソフト専用の検証施設はIBM全体でも今回の日本が初めて。同時に、これまで完全社外秘だったIBMソフトウエア技術情報を初めて外部に公開する。開設に当たって同社の大歳卓麻社長は「製品の障害に関する情報もできるかぎり公開したい。徹底的にオープンでやっていく」と話している。

 今回のSWCOCは、「オープン環境のミドルウエアビジネスは、パートナー各社をどれだけ技術的に支援できるかがカギ」(堀田一芙常務ソフトウェア事業部長)という認識のもとに設けられたもので、約10億円をかけて渋谷のマークシティーウエスト18階にオープンした。

 120名のシステムエンジニア(SE)を常駐させ、マルチベンダーのハード/OS環境を整えて、パートナーのシステム構築作業を物理的に支援するとともに、ソフト技術情報の社内データベースをパートナーに開示することでIBMのSEと同じ情報を得て開発に当たってもらうこと、さらに技術スキルを修得するための各種教育プログラムをパートナーに提供することが主な目的となっている。来年春には大阪にも同様の施設を立ち上げる予定。

 センター内は3分の2が常駐SEのオフィススペースに当てられており、残りの3分の1にマシンルームやデモエリア、セミナールームなどが設けられている。

 ハードウエアは、サン、HP、富士通、NECのサーバー各機種をはじめ、ディクス装置では富士通、NEC、日立製作所、EMC、ネットワークはシスコを採用している。IBMのハードウエアも、オープン系のxシリーズ、pシリーズ、RS/6000、さらにクライアントパソコンも多数設置されている。他社機種は、ハイエンドクラスは自社購入したものが中心で、ミドルクラスからローエンドは各メーカーからの協力で提供されたものが多いという。

 注目されるのは、IBMソフトウエア技術情報が初めて外部に公開されること。パートナーは専用のポータルサイトにアクセスし、IBMの社内データベースを検索することができる。提供される技術情報は、アーキテクチャーデザインや製品機能などの高度な技術ガイドブック、各種修正プログラムなど。とくに、オープンシステムでは製品や技術の特定の組み合わせによって不具合が発生する場合も少なくないため、既知の障害情報や不具合情報などの開示に積極的に取り組んでいく。これにより、パートナーの開発工程をスムーズにさせ、ソリューションの品質を高めてもらおうという狙いである。ただ、これらには特定の顧客に関する情報が含まれる場合があるため、セキュリティ面などをしっかり固めたうえで実施していく。当面は英語の情報提供になるが、来年には日本において蓄積された日本語の技術情報も開示していく予定。

 一方、パートナーへの技術教育では、効率重視の短期育成型と深み重視の徹底育成型の2パターンのカリキュラムを用意した。前者では、eラーニングを利用した学習や半日程度のセミナー、後者のパターンでは複数日をかけて体系的な知識を学ぶ技術セミナーやIBMのSEと一緒に仕事をしながらスキル取得を目指す1−3ヵ月単位の実践トレーニングなどを計画している。

 対象となるIBMミドルウエア製品は、DB2、ウェブスフィア、ロータス、チボリ、ラショナル−の5系統の製品群が含まれる。

 なお、このSWCOC施設は、年間22万円のパートナー会費を支払っている企業(現時点で約200社)が優先的に使用できることになる。