理化学研究所とNECソフトが突然変異体DBを共同開発

アクティベーション・タギング法でシロイヌナズナの変異体を解析、一般公開を開始

 2003.09.03−理化学研究所とNECソフトは2日、シロイヌナズナの突然変異体データベース(DB)「アクティベーション・タグライン・データベース」を共同で構築、3日から公開を開始すると発表した。キーワード検索や相同性検索、たん白質ドメイン検索、遺伝子発現制御配列検索など、複合的な検索機能を持っており、実験データを直接入力して自動的にDB検索する機能も備えている。利用者は、約1,000種類におよぶ突然変異体の解析が可能。

 今回のDBは、昨年9月から理研とNECソフトが共同で研究・構築を進めてきたもの。シロイヌナズナは高等植物の実験モデルとしてよく用いられるアブラナ科の一種で、全ゲノムの解読が終了しており、遺伝子の配列や位置がかなりわかってきているという特徴がある。

 共同研究グループは、アクティベーション・タギング法(http://pfgweb.gsc.riken.go.jp/projects/actv_j.html)を用いて約5万種類の突然変異体を作成し、その中から形態や成長速度、色、花芽形成、稔性などの目に見える異常を示す突然変異体約1,000種類をDBに登録。さらに、登録した突然変異体を解析して、アクティベーション・タグの挿入位置や異常の原因となった遺伝子の候補を同定した。

 DBには、目にみえる異常を示す突然変異体の表現型が画像とキーワードを用いて登録されており、異常の原因と考えられる候補遺伝子の情報とも結びつけられていることが特徴となっている。

 とくに、キーワード検索、相同性検索、たん白質ドメイン検索、遺伝子発現制御配列検索などを組み合わせてDB内を横断的に検索する機能を持っており、利用者は多角的な調査が可能。また、挿入されたアクティベーション・タグの近傍など、実際に計測した塩基配列データをもとに相同性検索を行い、全配列の中での位置とその近傍にある遺伝子の一覧を表示する近傍遺伝子検索機能を備えている。この機能は理研とNECソフトが共同で特許出願中だという。

 さらに、植物を観察しながらPDA(携帯情報端末)を用いて無線LANでDBを使用できるほか、種子管理機能など植物の遺伝子研究をさまざまな形で支援する機能を盛り込んでいる。

 理研は、このDBの一部を専用サイト(http://rarge.gsc.riken.go.jp:8080/activationtag/top.php)を通して一般公開している。公開版では、遺伝子情報または表現型で検索することにより、約1,000種類の突然変異体名を知ることができる。遺伝子型と遺伝子情報が関連づけられた情報や画像を入手したい場合は、別途利用者登録をする必要がある。

 なお、アクティベーション・タギング法は突然変異体を作成する手法の一つで、遺伝子の発現を増強させる機能が確認されている特定の塩基配列である“アクティベーション・タグ”をゲノム上にランダムに挿入することで突然変異を誘発させる。このタグがその近傍にある遺伝子の発現を強めるわけだが、これによって作成された変異体は優勢の突然変異を持ち、その次の世代で目にみえる変異としての表現型が観察できるようになるのだという。今回の共同研究を通じて、この手法の特性や優位性が確認できたことも大きな成果だと位置づけている。