菱化システムが日米加3社共同で材料系CCSを開発

最新MDエンジンをMOEに統合、SVL採用で拡張性高める

 2003.11.18−菱化システムは、米イーオンテクノロジーおよび加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)と共同で、材料設計支援のためのコンピューターケミストリーシステム(CCS)を開発する。来年3月をめどにパッケージソフトとして製品化し、全世界で売り出す。近年のCCS市場は医薬開発を目的としたシステム一色となり、ポリマー設計をはじめとした材料科学向けシステムは極端に数が少ないのが現状。菱化システムは、15年以上のCCS事業の経験があるが、自社でパッケージ開発に取り組むのは初めてであり、最新の計算化学技術を導入したシステムの中身も含めて、今後が注目される。

 材料系CCSは、1980年代末から1990年代初めにかけて盛んに開発されたが、欧米のシステムはアクセルリスの「マテリアルスタジオ」に集約されるかたちとなり、市場全体としては医薬系CCSに席巻されてきた。むしろ、富士通が材料向け分子動力学システム「WinMASPHYC」を販売したり、経済産業省プロジェクトを基盤としたポリマー設計支援システム「J-OCTA」を日本総合研究所が製品化を進めたりするなど、材料系CCSには日本のベンダーが積極的に取り組んでいる状況がみられている。

 今回の菱化システムの3社共同プロジェクトは、最新の計算化学技術で材料設計CCSにあらためてチャレンジしようとの狙いがある。イーオン社が中核となる分子動力学法(MD)エンジンを、CCG社がプラットホームとグラフィックスを担当し、菱化システムが全体のシステム構想をまとめるほか、三菱化学の研究部門との連携に基づくアプリケーションノウハウなどを生かして、具体的な解析ツールやひな形などを用意していく。

 イーオン社が開発中のMDエンジンは「TEAMフォースフィールド」と呼ばれ、新コンセプトに基づくフラグメントベースの高精度力場と、拡張性の高いMD計算機能を搭載。これをCCG社の統合CCSプラットホーム製品「MOE」のなかのエネルギーサーバーとして完全な形で組み込む。現在のMOEは医薬分野に特化して開発されてきているため、今回のプロジェクトは3社の利益が理想的に一致したものだということだ。

 材料分野には計算化学のパワーユーザーが多く、自分でプログラムを書いたり、既存のプログラムに独自のアルゴリズムを追加したりする例がよくみられる。MOEは、CCSに最適化されたプログラミング言語“SVL”を持ち、ソースコードが開示されているのが特徴であるため、パワーユーザーであればシステムを自由にカスタマイズすることができる。菱化システムでは、材料設計のための基本的な機能やツールはしっかりフォローしつつも、ユーザーの発想や意欲を刺激していろいろとやってみたいと感じさせるシステムに仕上げたいとしている。