菱化システムが合成経路設計支援システムARTHURを発売

米シンセマティクス社が開発、直感的操作で経路探索が可能

 2003.12.03−菱化システムは、米シンセマティクス(本社・ノースカロライナ州、スティーブ・ジョーンズCEO)と販売総代理店契約を締結、有機合成経路設計支援システム「ARTHUR」(アーサー)の販売活動を開始した。有機合成を知りつくした熟練研究者のノウハウを写し取った一種のエキスパートシステムで、目的の化合物を得るための出発物質や中間物質、その反応条件や収率などを知ることができ、目的物に至る合成経路を幅広く探索する機能を持っている。来年3月にはスタンドアロン版をリリースする予定で、価格は390万円。

 米シンセマティクスは2000年に設立された新しいベンダーで、ARTHURは昨年にベータ版が、製品版は今年に完成したばかり。米国では、ボストン大学やシグマアルドリッチをはじめ、インサイト社など数社の創薬バイオベンチャーに導入されているようだ。

 ARTHURは、「ARTHURナレッジベース」と「ARTHURリアクションプランナー」から構成されている。シンセマティクスが独自開発したナレッジベースには2万件の反応情報と6万件の化合物情報がきめ細かく登録されており、これを用いてデータ検索や“逆合成”のための経路探索を行うことが可能。

 ナレッジベースは3ヵ月ごとに2,000件ずつ増やす予定だが、ユーザーが自分でデータを登録することもできる。入力操作も簡単に行えるように工夫されており、既存データをテンプレートに利用できるほか、使用器具や反応温度などの条件設定もアイコンを使って指定できるので、実際にはほとんどタイプすることなく入力作業が行えるという。

 また、合成経路を探索するためのリアクションプランナーも直感的な操作が特徴。任意の化合物構造を中心として合成・逆合成の経路をネットワーク上に一覧表示する“リアクションリレー”機能を備えており、表示されている構造をクリックするだけでその先の合成ルートを展開することができる。関連する反応をだれでも簡単に引き出すことが可能である。さらに、目的物に至るすべての経路を網羅する“逆合成ツリー”機能により、新しい合成ルートを発見することも可能になる。検討結果をもとに、合成のための実際の手順書を作成・出力する機能も持っており、研究室全体の作業効率化にも寄与する。

 システムはJ2EE環境で構築されており、サーバーとしてLinuxやソラリス、Windows2000などを使用することができる。ナレッジベースを管理・駆動するために汎用のデータベースエンジンが必要になる。来春リリース予定のスタンドアロン版は、WindowsとSQLサーバーの組み合わせで利用できる。

 現在のクライアント/サーバー版の価格は、サーバーライセンスが買い取りで336万円(大学向け168万円)、クライアントライセンスが10指名ユーザーで年間522万円(同261万円)。スタンドアロン版のライセンスは永久使用権で企業向け390万円、大学向け195万円となっている。