2004年春季CCS特集:富士通

パッケージ事業で対米拠点強化、新製品開発も活性化へ

 2004.06.30−富士通は、CACheを中心とした分子モデリング製品が好調。パッケージビジネスでは、この3年間は10%以上の伸びを続けている。米ケンブリッジソフト製品を合わせて導入企業数は500社以上、そのうち100社は大規模ユーザーだという。近年では新しい製品開発の取り組みもあらためて活発化しているが、とくに実験を計算で置き換えることができる水準の精度を達成することを明確な目標としてきている。同社では、CCS技術が飛躍するカギはこのあたりにあると位置づけている。

 自社製品のCACheは計算化学と分子モデリングを中心とする汎用型のCCS製品だが、昨年にはたん白質解析やドッキングシミュレーション機能などを追加した製薬向けパッケージもそろえた。国内だけでなく米国市場でも販売実績が拡大しており、それまで西海岸を主体としていた事業拠点を東海岸にも展開。CACheの北米における開発・マーケティング・サポート体制を強化した。やはり、創薬支援機能を重点的に強化していく方向。

 とくに製品技術面では、分子軌道法によるドッキングシミュレーションを可能にしたCACheローカルSCFが注目される。電子の影響を考慮できるため、活性部位で共有結合を形成するような系でもうまく解析することが可能。東海大学との実証実験でも、計算速度は精密な実験を行う場合と同程度であり、計算結果と実験データとの間にも良い相関が得られたという。

 また、分子動力学法を使った高速ドッキングシミュレーションを行う専用コンピューター「バイオサーバー」の開発にも取り組んでいる。これは富士通製組み込み型プロセッサーを1,000個から2,000個搭載したもので、ゾイジーンとの共同研究に使用している。実際の研究テーマに沿ったかたちで評価に入っており、精度的にも実験を置き換えられるレベルに近づいているということだ。

 さらには、ゾイジーンとの共同研究で新しいデ・ノボ設計ツールも開発中。標的たん白質の立体構造に合わせて薬物分子をデザインするもので、合成しやすいものや新規性の高いものなどを自由に選び出すことができるという。新しい考え方が取り入れられており、特許も出願中だということだ。

 海外製品の代理店販売では、ケンブリッジソフトが好調を持続している。とくに、新製品のEノートブックは合成実験情報の電子化・共有化を容易に実現できるツールとして拡販に期待。加ACD製品も順調に伸びている。