インターシステムズが次世代型DBで医療機関向けに積極展開

複雑な医療関連データを高速に処理、パートナー戦略強化へ

 2004.04.09−インターシステムズジャパン(本社・東京都新宿区、坂寄嗣俊社長)は、多次元データエンジンを持つ次世代型データベース(DB)管理システム「Cache」(キャシエ)で医療機関向けに販売攻勢をかける。もともと病院などに特有のニーズに合わせて開発されたプログラミング言語“MUMPS”をベースにしており、同社の世界全体の売り上げの7割近くが医療機関からのもの。日本法人は設立2年目だが、医療分野への浸透を最優先にして事業拡大を目指す。病院システムに強い大手ハードベンダー(旧メインフレーマー)との提携関係の構築を目指し、スタッフ増員も図りつつ今年は売り上げ倍増を目指していく。

 米インターシステムズは1978年に設立された企業で、従業員数は世界で約500名、昨年の売り上げは1億4,400万ドルとなっている。いまのところ売り上げ全体の7割は北米市場が占めており、日本市場の売り上げ比率は2−3%とまだ小さい。

 製品のベースになっているMUMPS言語はマサチューセッツ総合病院のコンピューター科学研究所で開発されたもので、1970年代前半に当時の米保険教育福祉省(DHEW)で標準化が進められたという経緯もあって、医療機関向けシステムとして深く浸透してきた。1997年からDB管理システム「Cache」と変わったが、現在でもこのプラットホーム上でMUMPSプログラムを動作させることが可能である。

 現在のCacheはバージョン5で、多次元データエンジンを核とし、オブジェクト型とテーブル形式の両方でデータを動的に利用できる統一データアーキテクチャーを備えている。データ定義の同期や一方から他方へのマッピングなどは不要で、医療分野に特有の複雑なデータを効率良く管理し、高速に扱うことが可能。

 とくに、医学知識の進歩や医療技術の発展、医療制度の改革などの変化に対応できる柔軟性が求められる。例えば、検査データなどについても、受けた日付によって検査内容が異なったり、所見が変わったりすることが一般的であり、検査数値は文字列でありながら大小比較をする必要があるなど、リレーショナル型DBの単純な表形式では管理しにくい複雑さを持っている。

 Cacheでは、医療情報を三次元の時系列データの集積として扱い、データはすべて可変長であり、広大な論理空間に対してデータを散在配列させることが可能。また、データ構造は、現実世界を反映しやすい木構造/多次元構造で記述することができる。これらの特徴が、Cacheを医療分野のアプリケーションに最適なプラットホームにしているのだという。

 実際のユーザーでのベンチマークでは、既存のRDBをそのままCache上で動かすだけで検索速度が3倍、最適化を図ることでデータ更新性能が8倍、プログラムの書き換えでアプリケーションの実行性能が100倍に向上したなどの事例がある。大規模なDB処理でも、それほど大型のハードウエアを必要としないため、投資コストの面でもメリットが大きいとしている。

 国内市場においては、以前から旧DECがMUMPS事業(1994年末に同事業をインターシステムズに売却)を手がけてきており、通信・テレコム分野、流通・小売り・物流分野などを中心に、すでに1,000社に普及している。このうち、医療関係は約3分の1。販売は間接販売100%だが、パートナー44社のうち、やはり医療関係を得意とするところが約3分の1となっている。住友電工システムズの「sumiACCEL」、セーレンシステムサービス(開発は豪トラックヘルス)の「MedTrak」などのアプリケーションパッケージも提供されている。

 ただ、米国での実績に比べて医療分野の売り上げ比率が低いため、これを最優先で伸ばす計画。大手の医療機関に対しては旧メインフレーマーが強いため、Cacheの利点を訴えつつ、パートナー関係の構築を目指す考え。同時に、実際にシステムを操作する医師などへのアプローチも強める。学会などの場に積極的に参加し、Cacheの高速性や使いやすさなどへの理解を求めていく。

 日本法人のスタッフは現在、技術サポートを中心に約20名だが、事業の進展に合わせて逐次増員を図り、2年目の今年については売り上げ倍増を目指していく。