ノベルがLinuxディストリビューションに本格進出

フルラインアップで提供、エンタープライズレベルの信頼性実現

 2004.05.28−ノベルは27日、国内でLinux事業を本格的に開始すると発表した。今年1月にLinuxディストリビューター大手の独SUSE(スーゼ)を買収したことを受けたもので、6月1日から順次、企業向けのサーバー製品およびデスクトップ製品、コンシューマー向けデスクトップ製品を発売していく。業界最大の企業規模を持つLinuxディストリビューターとして、全世界にわたるサポート体制を武器に、既存のシステムからの移行や共存のためのプロフェッショナルサービスを提供していく。

 同社が6月から発売するのは、Linuxのカーネル2.4をベースにした「Novell SUSE LINUXエンタープライズサーバー8」と「同スタンダードサーバー8」、企業向けデスクトップの「同デスクトップ1」の3製品。SUSEの既存代理店であるぷらっとホーム経由で引き続き提供される。

 ノベルのパートナーを通しての販売は7月1日からの予定で、最初の製品はコンシューマー向けデスクトップ製品である「Novell SUSE LINUXプロフェッショナル9.1J」となる。さらに、8月には世界同時リリースでエンタープライズ版のバージョン9を市場投入する。これらは最新のカーネル2.6を採用しており、とくにサーバー製品での対応は世界初になるという。基本的な製品戦略としては、Linuxコミュニティの開発成果を組み合わせて、先進性を好むコンシューマー向けをまずパッケージ化し、次いで企業向けに展開するというパターンで行きたいということだ。

 同社の吉田仁志社長によると、ノベルのLinux事業の特徴は、「Linux業界で最大の企業規模を持つディストリビュータとして、エンタープライズレベルの24時間サポートと高い信頼性を提供できること」だという。さらに「デスクトップからサーバー製品まで、またOSからアプリケーションまで、パソコンやIAサーバーからIBMメインフレームまで、フルスタックでの製品ラインを持っている。加えて、もともとのノベル製品との統合により、Linuxを核としたクロスプラットホーム環境を柔軟に構築することが可能。ネットウエアユーザーにはマイグレーションプログラムを用意し、エンドユーザーにはほとんど気づかれないほどにスムーズにLinux環境に移行してもらえる」とした。

 さらに、同社はかつてのUNIXシステムVのオーナー企業として、SCOに事業売却後もUNIX関連の知的所有権を保持しており、著作権侵害による訴訟から利用者を保護することができるという。7月から具体的な免責補償プログラムとして提供する計画で、「SCO社の訴訟ビジネスはNovell SUSE LINUXには通用しない」ということだ。

 SUSEのLinuxは、日本ではあまり知られていないが、欧米では豊富な実績があり、ディストリビューション最大手のレッドハットに対抗した「ユナイテッドLinux」のベースOSとしても採用されている。インテルおよびAMDの32ビット/64ビットマイクロプロセッサーのほか、IBMのpシリーズ、iシリーズ、zシリーズ、S/390をサポートしており、シングルソースコードで各プラットホーム向けのバイナリーを自動生成するため、完全な互換性と管理スキルの統一を保ったまま、広範なスケーラビリティを実現している。このため、あらゆるエンタープライズアプリケーションをLinuxで置き換えることが可能になるという。

 ソフト価格はオープンだが、予想小売り価格はエンタープライズサーバーが11万円から、スタンダードサーバーが4万8,000円から、デスクトップ1が5ユーザーパックで6万1,000円、プロフェッショナル版は1万1,000円。