米ElsevierMDL:ラース・バーフォド社長兼CEOインタビュー

Isentrisパートナー戦略が進展、業界全体で創薬ワークフローを支援

 2005.10.21−コンピューターケミストリーの最大手ベンダーである米ElsevierMDL(エルゼビアMDL)は、テクノロジーベンダーからソリューションプロバイダーへの転身の真っ只中にある。次世代製品であるIsentris(アイセントリス)をオープンプラットホームとして幅広いパートナーを組織化し、新薬の研究開発プロセス全体を支援できる豊富なソリューションの提供を目指す。同社のラース・バーフォド社長兼CEOにアライアンス戦略の狙いや最近の業績について聞いた。

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 − 現在、御社が事業面で最大のテーマとしていることはなんですか。

 「当社の使命は、顧客である製薬会社の研究開発を効果的にサポートし続けることだが、その意味でも新しいプラットホーム製品であるIsentrisの開発と普及に全力を傾けている。 Isentrisは化学と生物学の両方の情報を扱うことができ、創薬研究プロセスをつなぐワークフロー統合システムをより柔軟に構築することができる」

 − パートナー戦略である“Isentrisアライアンス”が軌道に乗ってきましたね。

 「Isentrisはアプリケーションのプラットホームでもあり、業界標準に準拠した使いやすい開発環境を備えているため、顧客がこの上で自由に業務システムを開発することができる。ただ、当社自身でもアプリケーションをつくり、またパートナーにもつくってもらって、顧客に与える価値を高めていこうというのが、Isentrisを核にした戦略の基本的な狙いだ」

 「マイクロソフトをイメージしてもらえばわかりやすいと思う。マイクロソフトはプラットホームとしてWindowsを提供しているだけでなく、オフィスをはじめとするアプリケーションも出している。パートナーと競合する部分は確かにあるが、業界との協調と協業をうまく実現しているため、顧客はその恩恵を受けている。つまり、顧客が自分でアプリケーションを構築することが以前のISISの時代だったとすると、Isentrisの時代は業界全体の総力で顧客をサポートできることが大きな違いだといえるだろう。顧客に対して幅広いソリューションと、豊富な選択肢を提供できる」

 − 対日戦略に関してはいかがですか。

 「かつては代理店任せの時もあったが、ここ数年で日本法人の組織を強化し、販売からサポート、開発、コンサルティングまで、顧客とのダイレクトな関係が築けるようになってきた。さらに日本のユーザーとの距離を近くし、きめ細かく要望を吸い上げるようにしたい。また、Isentrisのパートナー戦略も日本市場に合わせたかたちで展開していくので期待してほしい」

 − MDLが1997年にエルゼビアグループの一員になって以来、経営内容が非公開となりましたが、最近の経営の状況はどうなのですか。

 「親会社のリードエルゼビアは世界で3万6,000人以上の社員を抱える大きなグループで、いろいろな事業部で構成されるが、当社はその中の科学情報部門の一角を占めている。当社の人員は約500人で、そのほかに外部の開発部隊が500−600人存在する。外部の開発者には日本人も含まれる。一例をあげると、当社のコンテンツ製品である“パテントケミストリーデータベース”には日本の特許情報も収録されているので、そのために日本人の外部開発者に協力してもらっている」

 − 売り上げや利益面はいかがですか。コンピューターケミストリー分野のベンダーには、過去数年間にわたって売り上げが上下したり、伸び悩んで横ばいになっているところもありますが、御社の実態はどうなのでしょうか。

 「数字に関しては非公開なので詳しくは話せないが、競合ベンダーよりも安定した数字を残している。著しい伸びというわけではないが、毎年着実に成長していることは事実だ。利益もしっかりと出している。経営が健全であることは、当社が長期にわたる安定したパートナーになり得ることを意味しているので、顧客にとっても利益になることだと思う」

 − ありがとうございました。