住商情報システムがたん白質ドッキング機能をSYBYLに統合

中電CTIからGreenPepperの販売権、抗体医薬品などの開発に寄与

 2006.06.23−住商情報システム(SCS)は、中部電力のIT(情報技術)事業会社である中電シーティーアイ(中電CTI)と提携し、たん白質同士のドッキングシミュレーションを行う「GreenPepper」の販売権を取得した。これに合わせ、SCSは米トライポスの統合コンピューターケミストリーシステム「SYBYL」とのインターフェースを独自に開発。これにより、優れたグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)環境を利用した解析を行うことを可能にした。ソフト価格は年間使用権で100万円。まずは、製薬企業の多いSYBYLユーザーに向けて導入を進めていく。

 GreenPepperは、お茶の水女子大学の郷通子学長(当時は名古屋大学教授)らのグループとの共同研究に基づくシステムで、2002年度からの中部経済産業局の産学官共同プロジェクトを通して開発され、2004年度から中電CTIが事業化を進めてきていた。

 ただ、システム自体はグラフィックのないコマンドラインツールで、パッケージソフトとしての販売よりも受託解析サービス事業のための内部ツールとしての活用がメインだったようだ。

 GreenPepperの機能は、2つのたん白質を粗視化し、その表面形状マッチングによってたん白質−たん白質のドッキングを行うというユニークなもの。アミノ酸側鎖表面の自由度を考慮したたん白質複合体構造の予測を行うことが可能で、結合サイトの推定や複合体の候補構造を高速に探索できる。グリッドコンピューティング環境を利用した大規模並列計算にも対応している。

 今回SCSは、このGreenPepperをSYBYLにオプションモジュールとして組み込み、グラフィック環境でこれらの機能を利用できるようにした。前処理から解析結果の可視化までを高品位グラフィック表示できるほか、SYBYLの他の機能と連携させることで、分子動力学計算や構造最適化などにつなげることも容易。SYBYL側にとっても、欠けていた強力な機能を補完できたことになる。

 たん白質同士のドッキング解析は、抗体医薬品の開発をはじめ、生体内部でのたん白質の働きに関する知見を得るために重要な技術だと考えられているため、幅広い普及が期待されるところだ。