菱化システムが米PQSの量子化学計算専用クラスター最新型を発売

AMDデュアルコアオプテロン搭載、専用GUI一新で使いやすく

 2007.02.08−菱化システムは、米パラレルクアンタムソリューションズ(PQS)が開発した量子化学計算専用PCクラスター「QuantumCube」(クアンタムキューブ)の最新版を販売開始した。AMDのデュアルコアオプテロンを8個(16コア)または16個(32コア)搭載しており、PQS独自の非経験的分子軌道法ソフトが内蔵されている。このため、面倒な手間をかけず、すぐに計算を実行することが可能。最新版では、専用GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境が機能強化され、使いやすさがさらに向上した。価格は一式で336万円から。

 PCクラスターは、低コストで高速なシミュレーション環境を実現できるため、広く科学技術計算分野に普及しているが、システム構築および運用管理に専門的なノウハウが必要で、一般の化学者・研究者にはやや敷居の高い存在でもある。

 QuantumCubeは、あらかじめPCクラスターをセットアップし、量子化学ソフトもインストールして提供することで、これらの問題点を解消したもの。内蔵の分子軌道法ソフトは、米アーカンソー大学のピーター・ピュレイ教授(http://uark.edu/chemistry/facultystaff/faculty/pulay/index.html)らのグループによって開発されたもので、収束の速い構造最適化アルゴリズムと並列化効率が高いことが特徴。ハートリーフォック法や密度汎関数法、MP2法などさまざまな計算手法に対応しており、構造最適化、遷移状態探索、基準振動解析、NMR化学シフト計算など、豊富な機能を備えている。

 とくに、今回のバージョンアップでは、クーロン積分高速化のためのFTC法が導入された。これは、平面波補助基底を用いてクーロン積分を高速化する方法で、分子サイズが大きい場合や大規模な基底関数を使用する場合に効果を発揮し、少ないメモリーでも精度を落とさずに計算を実行することができるという。

 また、専用GUIが「PQSMol」の名称で全面的に改良され、計算エンジンの特色を簡単な操作でフルに引き出すことができるようになった。分子構築機能も追加されており、入力ファイルの作成も簡単に行える。

 菱化システムでは、研究内容や計算対象によって量子化学計算エンジンを使い分けたいというニーズにこたえて各種のエンジンをラインアップしている。蘭SCMのADF、独コスモロジックのTurbomole、米マテリアルズデザインのMedeA−VASP、米ガウシアンのGaussian03、英UC3のMolpro、米セミケムのAMPACなどがあるが、これらもQuantumCubeに搭載して提供することが可能。実際の案件でも、複数の量子化学エンジンを載せて販売することが多いという。

 特定のエンジンで計算すること自体に意味があるのではなく、量子化学計算結果だけがほしいという場合には標準のPQS製エンジンで十分な場合がほとんど。例えば、コスモロジックの熱力学物性推算ソフトCOSMOthermには入力として量子化学計算結果が必要なため、これと組み合わせる例が多いという。

 基本的には、PCクラスターをノンストップで走らせるような量子化学計算のヘビーユーザー向けの製品だが、量子化学を身近なものにする使いやすい専用機として今後の普及が期待される。