オラクル:ライフサイエンス製品戦略担当クリシュナン副社長インタビュー

製薬業向けCRM戦略、日本市場を意識した機能強化も

 2007.03.09−オラクルは、“アプリケーションズ・アンリミテッド”戦略に基づき、2004年から200億ドル以上をかけた買収戦略で加えた製品群を一斉にバージョンアップし、最新版としてリリースした。その中でも、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)ソリューションの「シーベルCRM8.0」は、とくに製薬業向けで高いシェアを誇り、MR(医薬情報担当者)の活動をパワーアップするシステムとしての評価をグローバルに確立している。シーベル出身で、オラクル全体のライフサイエンス製品戦略担当を務めるラジャン・クリシュナン副社長に、日本のニーズを取り込んで強化した新機能など、対日戦略について聞いた。

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 − シーベルといえば、製薬業界では事実上の標準ともいうべき地位にありますね。

 「1997年にノマテックシステムを買収し、シーベルCRM製品に統合したところからライフサイエンスに特化した戦略がスタートした。シーベル全体にとっても、製薬業は新機能を取り入れる原動力になっており、営業テリトリー管理やオフラインでのデータ分析など、製薬業のニーズをもとに実現した機能は数多い」

 − 現在の実績は?

 「オラクルは全体として業種別戦略を強化しており、ライフサイエンス企業のIT(情報技術)システムを包括的にサポートできる製品群を幅広く揃えている。シーベルCRMとしては、製薬業向けでグローバルに16万シート、日本で1万8,000シートの導入実績がある」

 − 最新版8.0では、とくにMR向けの機能を充実させたそうですが、なかでも日本市場を意識したのはどの点ですか。

 「日本では、MRが医師との個人的な関係を大切にするところがユニークだと思う。MRは、それぞれの医療機関、および各診療部門、そして医師たちとのしっかりとした関係づくりをする必要がある。最新版では、医師との関係をビジュアルに把握できるように工夫した。これまでは、複数のソフトを使い分けて作業する必要があったかもしれないが、これからはシーベルの一つの画面だけで、毎月の医師への訪問をしっかりと管理できる」

 − MRが利用できる分析機能も強化されましたね。

 「その通りだ。競合製品と比較して、最も優位性を発揮するところでもある。わかりやすいウェブインターフェースで、オンラインでもオフライン状態でも利用できる。しかも、ツールキットではなく、あらかじめパッケージ化されたMR向けの分析アプリケーションとして組み込まれている」

 − どんなふうに使うのですか?

 「MRの日常業務のいろいろなことを効率良く処理できる。例えば、“大阪で30日間訪問していない心臓科の医師”といった条件で検索してターゲットリストを作成し、それをカレンダーやスケジュールと簡単に連携させることができる。“インサイト”から“アクション”へと一気に結びつけることが可能だ」

 − オンデマンド版の評判や実績はいかがですか。医薬業界はセキュリティ面で神経質です。オンデマンドを敬遠する傾向がありますか?

 「確かに、比較的保守的な業界ではあるし、セキュリティ的にデリケートな情報を扱っているのも事実だ。ただ、最近ではCRO(臨床開発受託企業)など、業務を外部にアウトソーシングする例も増えている。それで、製薬業にもシーベルオンデマンドの採用が着実に広がってきている。オンデマンド型で業種別展開しているCRMベンダーはオラクルだけなので、ここはわれわれの大きな強みだと思う。ただ、日本企業はまだまだ保守的であり、オンデマンドという選択肢を安心して選んでもらえるよう、われわれももっと努力したい」

 − オラクルとシーベルの統合は日本市場にどんな影響をもたらしますか。

 「オラクルはすでに日本において確立された企業だ。旧シーベルの立場からみれば、その意味で日本市場に対するコミットメントは劇的に向上した。オラクルとの統合は、シーベルCRMソリューションとしてはすばらしいプラス材料で、日本のすべての顧客やパートナーには、これまで以上の十分なサポートを約束できる」