米ケンブリッジソフトが電子実験ノートブックで豊富な実績

ROIの明確化で市場をリード、日本語版のサポート強化へ中国に拠点

 2007.05.30−米ケンブリッジソフトは、このほどCCSnewsのインタビューに応じ、電子実験ノートブック市場での実績の一部を公表した。同社はこのところ好調な業績を記録しているが、その牽引役が「E-Notebook Enterprise」。使いやすさやカスタマイズの容易さを武器に広く受け入れられつつあり、とくにROI(投資対効果)がはっきりと認められることが最大のポイントになってきている。日本での導入例も約10件に達しており、名実ともに電子実験ノート市場のマーケットリーダーの地位を築いている。

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 E-Notebook Enterpriseの導入実績は、メルクの1,700ユーザー、アストラゼネカの1,000ユーザー、グラクソ・スミスクラインの550ユーザー、ブリストル・マイヤーズスクイブの460ユーザーなど広範囲に及ぶ。とくに、メルクは合成部門だけでなく、分析部門や生物部門、前臨床部門にも採用している。さらに、合成部門と分析部門で利用しているノバルティス、プロセス化学部門と生物部門で利用しているアリーナファーマシューティカルなどの事例もある。

 カスタマイズではなく、コンフィギュレーションでさまざまな用途に対応できるのがE-Notebookの特徴。合成化学者に合わせて、また生化学者の業務に合わせて画面を最適に設定することができる。グラクソ・スミスクラインなどは12種類のコンフィギュレーションを用意しているということだ。

 研究者が慣れ親しんだChemDrawをベースにした操作性、マイクロソフトオフィス製品とのインテグレーション、データベースエンジンとしてのオラクルを利用した強力な検索機能など、研究活動を支援するための数々の武器を備えている。

 しかも、それらが高いROIに直結していることが最大のポイントとなる。例えば、アストラゼネカは導入に当たって精密なアセスメントを行い、反応式の記述、計算の実行、作業手順の記述、化合物の登録、インデックスの作成、月次レポート作成、特許申請のための論評、過去の実験ノートの参照など、業務ごとに時間やコストを洗い出した。その結果、E-Notebook導入によって年間12万時間、950万ドルの削減が可能になると見込まれたという。これは、研究のリソースにおいて1年当たり5週間分の余剰を稼げることに相当するわけだ。

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 E-Notebookは、強力なコンフィギュレーション機能を持つが、やはりユーザーの業務内容に適合させるためのカスタマイズが入ることも避けられない。一般的に言っても、あまりカスタマイズをすると、バージョンアップなどの際に工数が余計にかかったり、不具合が生じたりすることが多い。このため、E-Notebookでは、ユーザー固有の要求でカスタマイズしたもののうち、重要な機能は将来のバージョンで製品に標準で組み込むという方針をとっている。

 これまでにも、オルガノンやメルク、グラクソ・スミスクラインなどの要求に応じて、構造式作図ツールとしてのISIS/Drawの組み込み、実験装置・測定器などの出力データをPDF形式に変換してインポート、監査証跡への対応、電子署名機能の統合−などを行ってきた。このように、カスタマイズへの対応、その後のサポートにも問題はないという。

 一方、国内の事業体制としては、販売代理店(サブライセンス&システムインテグレーション)の富士通とヒューリンクス、認定インテグレーターの日本IBMという布陣で取り組んでいる。それに加えて、日本語環境でのソフトウエアの品質を高めるため、中国・大連にサポートセンターを設立すべく準備中。現地企業にアウトソーシングして設けるもので、市場動向に合わせて順次拡大・強化を図っていく。

 最後に、製品の将来構想としては、基盤のアーキテクチャーをドットネットに移行させ、最新のIT環境への対応とパフォーマンスアップを目指すことにしている。既存ユーザーには保守の範囲内で対応し、エンドユーザーから見た操作性が変わるようなことはない。また、検索機能を強化する一環として、グーグルのように自由なキーワードで調べるような機能を実現したいということだ。