シミックス:ゴールドビー会長&MDL:バーフォドCEOインタビュー

MDLのブランド・製品名は残す方向、日本法人はMDLを母体に再編

 2007.09.15−シミックステクノロジーズのスティーブン・ゴールドビー会長とElsevierMDLのラース・バーフォド社長兼CEOが、CCSnewsのインタビューに応じ、今回の買収・合併に至る経緯や今後の方向性などを明らかにした。10月1日から新体制に移行するが、合併後の組織体制の詳細はまだ発表できない段階。ただ、MDLのブランドや商品名を引き続き生かすかたちで検討が行われているという。日本法人については、MDLの日本法人を母体にして再編が行われる模様だ。

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 − 今回の買収は、MDLの親会社であるエルゼビアがMDLを売りたかったのか、シミックスがMDLをほしかったのか、どちらの方から話しがはじまったのでしょうか。

 ゴールドビー 「シミックスは実験の自動化などのビジネスからスタートしたが、近年はソフトウエア事業が拡大してきている。電子実験ノートブックをはじめとして、現在ソフト事業で60社の顧客がいるが、顧客側も当社がこの方面を拡大することを期待している。MDLは化学・製薬分野の研究向けソフトで市場リーダーであり、当社が興味を持つのは当然だと思う。また、エルゼビア側もたびたびMDLを売却する意思を示してきていた」

 バーフォド 「エルゼビアがMDLを傘下に収めてちょうど10年になるが、当時は紙媒体から電子媒体への転換期で、MDLというソフト部門を内部に抱えることがベストの選択肢だった。しかしここへ来て、情勢は、ソフトウエアは単独で事業化する方が良いという方向に変わってきた」

 ゴールドビー 「MDLを外に出したとしても、製品・サービス面での関係を保持できれば良いという結論だろう」

 バーフォド 「実際、今回の買収でも、バイルシュタインやパテントケミストリーデータベースといったコンテンツへのアクセスは、これまで通りに可能となっている」

 − シミックスとMDLの製品およびサービスは互いに補完する関係にありますので、シナジーが出やすい合併だと思います。ただ、電子実験ノートだけは製品が重複していますが、これはどうなりますか。

 ゴールドビー 「やはり両社の技術が合わさることで、より優れたソリューションを顧客に提供できる。例えば、MDLの電子実験ノートに組み込まれた強力な検索エンジンやレポーティング機能がある。これをシミックスの電子実験ノートと統合すれば、紙のノートを使用する時代は完全に終了すると思う」

 − 電子実験ノートについては、製品の統合計画があるということですか。

 ゴールドビー 「シミックスとMDLは以前からのパートナーであり、その流れの延長で統合を進めていきたい。それに、シミックスにはMDL出身の社員が35人(全社員の約10%)もいる。MDLの製品のこともよくわかっているし、製品の統合には楽観的な考えを持っている」

 バーフォド 「両社は地理的にも近いので、組織面の統合もスムーズに進むだろう。顧客も今回の合併には積極的な見方をしてくれている。エルゼビア製品との連携も保たれるし、製品やサービス面でのマイナスはないからだ。そこにシミックスの技術が加えられるわけだから、シナジーは2倍になる」

 − 10月1日から新体制ということですが、MDLのブランドはどうなりますか。

 ゴールドビー 「シミックスはNASDAQに上場している公開会社であり、そこに変更はない。ソフトウエア部門の名称・ブランドをどうするかということになるが、知名度の高いMDLのブランドや製品名を残す方向で検討している。MDLももともとは「モレキュラーデザインリミテッド」として出発し、1993年にいったん上場したときに「MDLインフォメーションシステムズ」と名前を変えた。実のところ、どちらも名付けたのは私だった。ここで、また新しい名前を考えるという可能性もないとはいえないが・・・(笑い)」

 − 日本での事業体制、日本法人はどうなりますか。

 ゴールドビー 「1982年に日本で最初のユーザーを獲得して以来、日本におけるMDLのビジネスは今年で25年になる。シミックスにとっても、日本が重要な市場であることは同じだ。現在、MDLの日本法人の社員は25人、シミックスは1人であり、結論としてはMDL日本法人を母体にして組織統合することを予定している。社名をどうするかなど、まだ正式に決まっていないこともあるが、スタッフは変わらないので顧客やパートナーに迷惑をかけることはない。安心してほしい。それに、シミックスの既存顧客にとっては、日本の組織が一気に大きくなるので、サービスやサポート面で大きな恩恵があると思う」

 − パートナー戦略についてはどうですか。

 ゴールドビー 「シミックスはCTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)を販売代理店としており、その関係は継続する」

 バーフォド 「日本でのビジネスにおいてはパートナーシップがとくに重要だと認識している。MDLにとってもCTCLSは大切なパートナーだ。さらに、新日鉄ソリューションズや日本オフィス・システム(NOS)など、パートナーとの関係はさらに緊密なものにしていく」

 − バーフォド氏の今後については?

 ゴールドビー 「MDLのCEOとして築いてきた実績には心から感謝している。ISISからIsentrisへの更新という難しい時期をうまく舵とりして、ユーザー増にも結びつけてくれた。しかし、シミックスにはすでにCEOがいる(今年の4月に新CEOを任命したばかり)。バーフォド氏は、これまでの経験を生かして、新天地でさらにキャリアアップを果たされるだろう」

 バーフォド 「私としてもMDLでのキャリアを誇りに思う。MDLの社員に新しいホームを提供することが私の最後の仕事だったが、その意味で良いホームをみつけることができた。今回の合併を通し、顧客にも社員にも利益を与えることができた」

 − ゴールドビー氏はMDLに久しぶりに返り咲いたわけですが、いまのお気持ちは?

 ゴールドビー 「私はMDLを愛している。社員たちも良い雰囲気で迎えてくれており、暖かい気持ちでいっぱいになっている。2つの組織がうまく融合できるようにがんばりたい」