計測エンジニアリングシステムがマルチフィジックス型シミュレーターの最新版

物理モデルの連成に制限なし、化学反応の組み込みも可能

 2008.01.12−計測エンジニアリングシステム(本社・東京都千代田区、岡田求社長)は、スウェーデンのコムソル社が開発したマルチスケール/マルチフィジックス型シミュレーションソフト「COMSOL」の最新バージョン3.4を発売した。流体、構造、電磁場、熱伝導、化学反応など各種の現象を扱うことができ、とくに電磁気学分野や化学工学分野でのユーザーが多い。今回の最新版では、マルチコア/マルチスレッド対応となって処理能力が向上したほか、現実に近い複雑な現象が扱えるようにさらなる機能強化が施された。価格はコアパッケージが150万円。

 コムソルは、スウェーデン王立工科大学(KTH)のノウハウを基盤にしたベンダーで、数学や数値処理に強みがある。計測エンジニアリングシステムは2001年2月に設立して間もなくからコムソルの国内代理店として独占的にシステムを販売し、これまでに約600ライセンスの導入実績を築いている。

 COMSOLのコアソルバーは、偏微分方程式(PDE)を基本とし、1本でどんな物理現象にも対応できる強力な機能を持つ。また、連成問題としての物理現象の組み合わせにもまったく制限がない。実現象の支配方程式をそのまま組み込み、精度の高い完全な強連成でシミュレーションを行うことが可能。

 流体力学、構造力学、変形、音響、電磁気学、対流・拡散、熱伝導などの物理モデルが基本的に組み込まれているほか、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)や化学工学、RF(高周波)、地質環境など具体的なアプリケーションに合わせた拡張機能モジュールも用意されている。

 基本的に、偏微分方程式で定式化できる問題であれば、物理現象の組み合わせや次元などに制限はない。既定の物理モードでカバーできない場合でも、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)環境でゼロから偏微分方程式を使ったモデリングが行えるようになっている。内蔵のモデルもブラックボックスではなく、方程式ベースで編集することが可能。

 なかでも、化学工学モジュールは、燃料電池や電気化学、CVD(化学気相成長)などの物質輸送をともなうプロセス、多成分流れ、非圧縮性・圧縮性流れ、乱流、非等温流れ、非ニュートン流れ、多孔質媒体流れ、拡散、伝熱などに関する解析機能を装備。燃料電池スタックチャンネル内の流れ場や各種反応器内の流れ場などのシミュレーションに利用される。2年ほど前から化学反応シミュレーター「リアクションエンジニアリングラボ」が組み込まれ、化学反応を解析モデルに反映させることができるようになった。(米リアクションデザインのCHEMKINと同様の機能を実現しているという)

 最新バージョン3.4では、多相流や自由対流の取り扱いが強化され、気泡をともなう流れのシミュレーションが可能になった。また、乳化・沈降・分離などのプロセス向けの混合モデルを簡単に設定できるようになった。さらに、今年に予定されている機能強化で、プロセスシミュレーションにも本格的に対応していくという。