菱化システムがCHEMKINの最新上位製品をリリースへ

オプションもフルセットで提供、アカデミックユーザーの更新狙う

 2008.07.10−菱化システムは、米リアクション・デザインが開発した燃焼シミュレーションソフトの最新版「CHEMKIN-PRO」のベータ版リリースを開始した。フルオプションの上位製品として開発されているもので、“リアクションパスアナライザー”や“パーティクルトラッキングモジュール”といった新機能が搭載される。同社では、正式版の発売に合わせて価格体系の改定を検討しており、古いフリー版を使用しているアカデミックユーザーに更新を促すことをターゲットにしたい考え。

 CHEMKINは、気相および固体表面上の化学反応を反応速度論に基づいてシミュレーションするソフト。内燃機関の燃焼反応や排ガス処理の触媒表面反応、また化学気相蒸着法(CVD)による薄膜形成反応といった複雑な化学反応をともなう現象の解析に広く利用されている。もともとは、1980年代前半に米サンディア国立研究所で開発されたもので、1997年から商用化されているが、大学関係などの中には初期の古いプログラムを使い続けているユーザーもいるという。

 今回のCHEMKIN-PROは、リアクション・デザイン社が2005年から推進している「モデル燃料コンソーシアム」(MFC)の開発成果を反映させて開発した上位製品。オプションのツールがフルに組み込まれている。(別表参照:バージョン4との比較)

 ガソリン、ディーゼルあるいは代替燃料を用いるエンジンの燃焼効率をモデル化し、精密に解析することが可能。エンジン開発技術者と燃料設計技術者の双方に役立てることができ、最適な燃焼効率を達成するための要素をシミュレーションによって割り出す手助けをする。

 とくに、計算速度が5−10倍に高速化されており、典型的なシミュレーションサイクルを“日”のオーダーから“時間”オーダーへと短縮できるとしている。限られた時間内で多数の異なる条件を検討することが可能になるため、実用性が格段に高まった。

 新機能のリアクションパスアナライザーによって、どの反応経路が支配的な存在であるかを視覚的・対話的に解析することが可能。設計者は、反応機構を簡略化する条件を簡単に見つけ出すことができる。また、パーティクルトラッキングモジュールは、燃焼の過程で生じる微粒子について、その核の生成開始から酸化にいたる成長過程を追跡して、その数と大きさの統計量を予測する機能を持つ。

 現在は、ベータ版を一部ユーザー向けに提供している段階だが、数ヵ月以内に正式版をリリースできる予定。菱化システムは、7月22日に東京で「CHEMKINフォーラム」を開くが、その場において最新情報が公開されるとみられる。いまのところ、アカデミック向けに現行の据え置き価格でPRO版が導入できるようにして、移行を促す作戦を考えているという。

CHMKIN-PROとの機能比較


資料:リアクション・デザイン

  CHEMKIN-PRO CHEMKIN 4
Combustion Reactors
Surface Chemistry
Parameter Study
Reactor Networks Enhanced Basic
Solver Speed Enhanced Basic
Reaction Path Analyzer ×
Multi-Zone Engine Model ×
Particle Tracking ×
Uncertainty Analysis ×
64-bit Support ×