2008年冬CCS特集:ウェイブファンクション

2年半ぶりバージョンアップ、マルチコア並列処理に対応

 2008.12.04−ウェイブファンクションは、企業の研究活動から大学などでの教育にまで幅広く利用できる分子モデリングシステムの最新版「Spartan '08」を12月中旬からリリースする。まずはWindows版だが、来年の初めにはマック版とLinux版も揃い、すべてのプラットホームで最新バージョンが利用できるようになる。現行のWindows版Spartan '06から2年半ぶりのバージョンアップとなるため、大きな反響が期待できそう。

 今回の最新版では多数の機能強化が行われているが、目だったところを取り上げると、まずはマルチコアプロセッサーのサポートによる並列処理が可能になったことがあげられる。密度汎関数法(DFT)とハートリーフォック法といった量子化学計算において、クアッドコアまでの並列化が可能となっている。

 これは、溶媒中における安定平衡構造の計算など、計算量の大きな問題に対して威力を発揮する。従来は、真空中で最安定構造を探索したあと、溶媒効果を考慮するという2段階の計算過程を必要としたが、新しい08版では水または有機溶媒の中での構造最適化を一度に行うことができる。この計算には、DFTあるいはハートリーフォック法を利用する。

 また、Spartanにはあらかじめ計算した結果を収録したデータベース「SMD」がオプションとして用意されているが、これに新しいコンテンツとしてT1熱化学データベース4万件が追加された。さらに、3万件のIR(赤外線)計算データを登録した「SIRD」が独立した新データベースとして提供される。こちらは、実測したIRスペクトルチャートでデータベース内を検索できることが特徴。

 そのほか、08版での大きな変化は、社内の開発環境が統合され、各プラットホーム向けのリリース時期のずれが短縮されたこと。06版のWindows版とマック版では年単位での開きがあったが、今後はほぼ同時期でのリリースが可能になるという。

 これにともない、同社では最新版へのバージョンアップ権利が付いた保守契約を推進する考え。保守ユーザーには、通常はオプションとして別料金になるデータベース群が、追加費用なしですべて入手できるという特典がある。