BASFがアスペンテック製品全社展開で仮想化技術を本格採用

マイクロソフトの“App-V”活用、aspenONE導入期間が半減

 2008.11.08−アスペンテクノロジー(アスペンテック)は、独BASFがマイクロソフトの仮想化技術を全面的に採用し、化学工学ソフトウエアの全社導入展開を成功させたと発表した。導入期間が半減したことに加え、長期のプロジェクトのために古いファイルや以前のバージョンのソフトも併用したいという現場のニーズに応えることが可能になった。アスペンテックは9月にリリースした「aspenONEバージョン7」で仮想化技術に本格対応、マイクロソフトも10月に仮想化製品をバージョンアップしたばかり。今回の事例をテコに、日本企業に対しても仮想化戦略を積極的に推進していく。

 BASFはアスペンテック製品の長年のユーザーで、プロセスシミュレーションなどの化学工学ソフトウエアスイートを使用し、プラント設計の改善や生産の最適化を実施してきた。

 BASFグループでは、情報技術子会社のBASF ITサービス社がシステムの導入や運用管理を一括して執り行っている。ところが、世界中に分散するBASFのエンジニアチームに対して個々に修正プログラムを適用したりバージョンアップを実施したりするために、3−6週間もの作業期間を必要としていた。また、ソフトをバージョンアップするためには以前のバージョンを削除しなければならないが、実施中のプロジェクトがあるために古いバージョンを使い続けたいというニーズも多く、管理コストがさらにかさむ原因にもなっていたという。

 そこで、BASF ITサービスは、アスペンテックおよびマイクロソフトと協力して、仮想化技術を活用したアプリケーション展開ソリューションを導入。具体的には、マイクロソフトのアプリケーション仮想化ソフト「SoftGrid Application Virtualization[ソフトグリッドアプリケーションバーチャライゼーション]」(現製品名・Microsoft Application Virtualization[マイクロソフトアプリケーションバーチャライゼーション]、略称・App-V)を採用した。

 これは、アプリケーションの動作環境を仮想化してパッケージングし、サーバーからクライアントPC側に配信して動作させる機能を持つ。仮想化されたパッケージには、アプリケーション本体だけでなく、OSが使用するサービスやプラグインなどのコンポーネントが含まれており、ほかの仮想化環境と独立して動かすことが可能。このため、通常は共存できない別バージョンのソフトを1台のPC上で使用することが可能になる。

 また、アプリケーションは個々のPCにインストールされるのではなく、使用時にサーバーからストリーミング配信される仕組み。インストールの手間は不要になり、管理が大幅に軽減される。配信されたアプリケーションはPC側にキャッシュされるため、ネットワークとオフライン状態でも利用することが可能。初回起動時以外は差分だけの配信となるため、通信時間もそれほどかからない。

 今回、BASF側ではアスペンテックのプロセスシミュレーター「AspenPlus」などを含む「aspenONEプロセスエンジニアリングスイート」の各ツールがApp-Vの仮想化環境で動作することを確認、本格的に採用することにした。ワールドワイドの2,500−3,000人のエンジニア用のクライアントPCが対象になるという。

 日本法人のアスペンテックジャパンとマイクロソフトでは、App-VがBASFで実証済みのソリューションであると位置づけ、仮想化技術の利点を強調しつつ、国内ユーザーへの採用を目指していく。マイクロソフトにとっては、aspenONEバージョン7は、App-Vに正式対応した最初の技術系アプリケーションであり、今後もアスペンテックとの協業を推進する考え。また、App-Vはバージョンアップの際の評価にも適しているため、アスペンテックとしてはApp-VでaspenONE最新版への早期更新を促していく作戦だ。