デンマーク・モレグロ社:レネ・トムセンCEOインタビュー

高精度ドッキングで注目、多機能をオールインワン統合

 2009.03.19−新しい医薬品を設計するための研究手法としてドッキングシミュレーションの採用が拡大している。ターゲットとなるたん白質の構造の解明が急速に進んでいることにともない、その活性部位に特異的に作用する医薬品分子の構造を探ることが可能になってきたため。海外製・国産を含め多数のソフトがしのぎを削っているが、なかでも高精度・低価格で注目を集めているのが、デンマークのモレグロ社が開発した「Molegro Virtual Docker」(Molegroバーチャルドッカー)だ。既存のソフトへの不満がきっかけだったというレネ・トムセン(Rene Thomsen)社長兼CEOは、「製品には自信がある。ぜひ一度試してほしい」と述べる。

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 − 設立の経緯を教えてください。

 「もともと、大学でユーザーとしてドッキングシミュレーションソフトを利用していたが、この分野には新しいソリューションが必要だと実感していた。それで、2005年に開発責任者であるミカエル・クリステンセン(Mikael H. Christensen)と一緒に、国の助成制度や民間の投資会社から資金を得て会社を立ち上げた。その後、2006年3月にMolegroバーチャルドッカー、2007年10月にMolegroデータモデラーをパッケージとして完成させ、販売を行ってきている。現在、アカデミックとコマーシャルを合わせて100ライセンスほどの導入実績がある」

 − 新しいソリューションが必要だと感じたのはなぜですか。

 「既存のソフトは、いくつものツールを組み合わせて使わなければならないために複雑で面倒だったし、自由なプラットホームを選ぶこともできなかった。それに、最大の問題として精度が低いことがある」

 − あらためて、Molegroバーチャルドッカーの特徴を教えてください。

 「最大の特徴は精度だ。他のソフトよりもドッキング解析の精度が高い。われわれのベンチマークによると、競合製品との精度の比較は、FlexXが57.9%、Surflexが75.3%、GOLDが78.2%、Glideが81.8%、Molegroバーチャルドッカーは87.0%だ。また、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)に優れており、分子のインポートからドッキング計算結果の検討まで、一連の操作がしやすい。クロスプラットホーム対応なので、Windows、MacOS X、Linuxと、機種を選ばずに自由に利用してもらえる」

 − 他のソフトよりも精度が高い理由は?

 「誘導型微分進化アルゴリズムを採用しているためだ。遺伝の法則と同じイメージで世代を重ね、スコアの高いものだけを残していく。GOLDも遺伝アルゴリズムの一種を利用しているが、われわれの製品とは精度に開きがある。そのほか、側鎖のフレキシビリティを考慮したインデュースドフィット(誘導適合)、構造の類似性に基づくリガンドベースのスクリーニング、統計解析のためのデータアナライザーなど、多彩な機能をオールインワンで備えている」

 − もう1つのMolegroデータモデラーはどんな製品ですか。

 「バーチャルドッカーに内蔵されているデータ解析機能を、より専門的で独立したソフトとして発展させたものだ。スプレッドシートのイメージでデータモデリングやデータマイニングを簡単に行うことができる。幅広い用途に対応するが、バーチャルドッカーの計算結果を利用して構造活性相関(QSAR)などに用いることも可能。多次元の情報を効率良く視覚化するスプリングマスマップ機能などの評価が高い」

 − 今後の機能強化について教えてください。

 「メガファーマが持っているような大規模な化合物ライブラリーにアクセスしやすくすることに最優先で取り組んでいる。そのため、ワークフローツールであるKNIMEとの連携を実現する(注)。また、新しいスコアリング関数やリードオプティマイゼーション機能の追加、金属を含むたん白質への対応なども進めていく。今後の開発テーマによっては、製薬企業やアカデミックとの共同研究にも取り組みたいと考えている」

 − 日本における事業展開について。

 「ノーザンサイエンスコンサルティング(本社・札幌市中央区、村上剛代表取締役)が代理店として活動してくれている。1年に何度か今回のように来日し、一緒に顧客回りをしているが、良い感触を得ている。ただ、まだまだ知名度が低いので、製品の良さが十分に理解されていない。(ノーザンサイエンスのホームページから)機能制限なしのフリートライアルを受け付けているので、ぜひ一度試してみてほしい」

(注)日本国内での対応は未定