AMDが40ナノメートル技術採用の最新GPUを発表

100ドルクラスで高い性能、スイートスポット戦略さらに進展

 2009.04.29−日本AMDは28日、40ナノメートルプロセスを世界で初めて採用した最新グラフィックプロセッサー(GPU)として、「ATI Radeon HD4770」を発表した。高性能ながら109ドル(メーカー希望オンライン小売価格)価格帯のメインストリームクラスの製品で、同社の“スイートスポット戦略”の中核を占める。低価格帯に革新的な製品を投入することで、市場リーダーとしての地位をさらに高めたいという。

 記者説明会に出席した米AMDのグラフィックプロダクトグループ・デスクトップグラフィックス部門のプロダクトマーケティングマネジャーを務めるズビカ・グリーンスタイン氏によると、以前のGPU開発の基本戦略は、「まずウルトラハイエンド市場でナンバーワンの性能をみせつけることでユーザーの心をつかむことが何よりも重要だった。そのため、ダイサイズの肥大化にこだわらず、コストを目一杯にかけ、消費電力に目をつぶって、性能だけを優先していた。しかし、今後はそのような戦略は通用しない。コストと電力と性能のバランスを重視し、売れ筋価格帯のスイートスポットに合わせた革新的な製品を投入していくことがATIの新戦略であり、2008年のわれわれの成功はこの戦略が効を奏したもの」とする。

 製品ラインアップとの具体的な対比では、ウルトラヘビークラスの400〜500ドル帯(Radeon HD4870 X2)、200〜300ドル帯(Radeon HD4890、4月2日発表の新製品)、100〜200ドル帯(Radeon HD4870/4850)、新たな100ドル帯(今回発表のRadeon HD4770)、最後に50ドル帯のバリュー製品(Radeon HD46xx/4550/4350)−となる。この5つの価格帯を網羅することで、GPU市場の需要の山をすべて押さえることができるということだ。

 とくに今回のHD4770は、HD4850のアーキテクチャーをベースにしながら、プロセスを4850の55ナノメートルから40ナノメートルへと微細化しており、ストリームプロセッサー数を4850の800から640へと削減しながら、960ギガFLOPSという処理能力を実現している。エンジンクロックは750MHzで、高性能なGDDR5メモリーをサポートしている。40ナノメートルプロセスの採用は、GPUに限らず量産品としては世界初だという。

 このところの景気後退のなか、消費者の志向はより低価格帯へとシフトすることが予想されるだけに、このクラスに新たな戦略商品を投入したことの意味は大きいと思われる。

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 また、グリーンスタイン氏は、GPUの処理能力をグラフィックス以外にも利用できるようにする“ATI Stream”技術についても触れ、「エヌビディアのGPUアクセラレーション技術である“CUDA”と同じだと思われるかもしれないが、大きな違いがある。エヌビディアはすべてがGPUでできると唱え、インテルはCPU至上主義を貫いているが、AMDはCPUとGPUの両方を持っているのでバランスの取れた考え方ができる。CPUはシリアル処理、GPUはパラレル処理が得意であり、アプリケーションによって適不適がある。さらに重要なのは標準であり、CUDAでプログラミングしてしまうと、エヌビディアのチップ上でしかソフトが動作しない。ATI StreamはオープンスタンダードのOpenCLをサポートしているのが強み。過去、GPUまわりにはいろいろな独自技術・独自規格があったが、それらはすべて標準に取って代わられた。CUDAもいずれ消え去る運命だと思う」とした。

 OpenCLは、ATI StreamのSDK2.0として近く提供開始されるということだ。