マイクロソフトが新年度経営方針を発表

Windows7の一般発売は10月22日、企業向けビジネスさらに拡大へ

 2009.07.08−7月から新年度を迎えたマイクロソフト日本法人の樋口泰行社長は7日、都内で記者会見し、新年度の経営方針を発表した。とくに、次世代OSの「Windows7」については、「日本法人の社員が積極的に開発に参加し、日本市場への対応も含めて本当に自信の持てる製品に仕上がった」とし、普及への強い意欲を示した。発売日は、米国と同じ10月22日となることが正式に発表された。

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 経営方針説明のなかで樋口社長は、リーマンショック以降の景気後退を踏まえ、顧客の意識に明確な変化があらわれてきていると指摘。「とくにコスト意識が顕著になっている。しかし、これは目先の経費削減だけを指すのではなく、中長期的な視野でコスト構造をいかに変革するのか、一方で差別化のための投資の位置づけをどうするか、といった高度な戦略的判断が重要になっている。そうしたなか、アセットを抱えないいわゆる“持たざる経営”を志向する動きが強まっている」と述べた。

 このことは、同社の企業向けビジネス戦略の今年のポイントの1つである“ソフトウエア+サービス”を前進させる重要な背景になるという。これは、社内にソフトウエアをインストールして使う通常の運用と、クラウドコンピューティングの各種サービスを組み合わせる考え方で、「いわば両者の良いとこ取りであり、エンドユーザーからは社内かクラウドかどちらを使っているのかわからないようなシームレスな統合も実現できる」。

 この構想を具現化するクラウドOSとして開発されている「Windows Azure」(ウィンドウズ・アジュール)は、日本では技術評価パイロットプロジェクトを進めている段階だが、米国では今年後半に商用利用が開始されるという。社内システム用またはクラウド用のアプリケーションを1つの統合開発環境で構築できるようにする「.NET4.0」(ドットネット4.0)および「Visual Studio 2010」が来年前半にリリースされ、正式にAzure対応が実現される。エンドユーザーにリッチなユーザーインターフェースを提供する「Silverlight」(シルバーライト)は、今年の7月に「Silverlight 3」がリリースされ、H.264対応の高画質動画がサポートされる。

 同社では、企業向けビジネスを強化するため、今年10月に「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」を開設する。サーバー300台、ワークステーション300台、ストレージ500テラバイトを設置し、「ハードウエアを含んだ包括的ソリューションの構築から、導入、運用まで、どんな相談にも対応できる施設とする。パートナーとの連携による技術検証・開発支援に加え、産学連携なども推進し、日本発のイノベーション創出に貢献したい」とした。

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 一方、Windows7に関しては、7月最終週に開発が完了し、一般向け発売日を10月22日とすることが発表された。この日程は米国と同じだが、企業ユーザーに対するボリュームライセンス向けの出荷はこれよりも早くなる。ただ、こちらの日程はまだ確定していない。

 樋口社長は、「Windows7の開発に当たっては、顧客の声を最大限に取り入れるため、200ヵ国/1,100万人のVistaユーザーに加え、1,600万人に対してインタビューを行い、90以上の利用シナリオを想定して検証を重ねてきた。われわれ日本法人からも615人が画面関係の開発に参加したほか、私も含めて全社員がベータプログラムに登録し、日本法人から160件のバグを報告することができた。ある古参の社員は、これまでにマイクロソフトがリリースしたなかで一番良いOSだと感想を述べている。社員全員が自信をもっておすすめできる製品になったと思う」と胸を張った。

 また樋口社長は、「Windows7が動作可能なスペックのPCが一般市場で1,550万台、法人市場で1,140万台稼働中。また、Windows7対応機へと買い替えが期待できるものとして、一般市場で1,980万台、法人市場で2,310万台のPCが稼働している。これらすべてがWindows7が普及するインストールベースになると考えている」とし、早期普及への自信を示した。