アクセルリスが初の生物系サンプル情報管理システム

大手製薬メーカー3社と共同開発、細胞・抗体など複数の生物学的実体に対応

 2010.05.26−アクセルリスは、バイオ医薬品などの研究開発で必要になる生物系サンプルの情報管理を可能とするデータベースシステムを開発、「Accelrys Biological Registration」(アクセルリス・バイオロジカルレジストレーション)の商品名で販売開始した。酵母菌、細胞株、DNA、たん白質、プラスミド、ワクチン、抗体、siRNAの8つのカテゴリーで情報を登録・管理できる。従来型の医薬品を対象にした化合物管理システムは多数製品化されているが、生物サンプル情報を扱えるエンタープライズレベルの本格的なデータベースソフトは業界でも初だという。大手製薬会社とコンソーシアムを組んで開発したもので、国内でも関心を集めそうだ。

 「Accelrys Biological Registration」は、2007年からスタートした「バイオロジカルレジストレーション・スペシャルインタレストグループ」での共同研究を通して開発を推進。メルク、アボット、イーライリリーがメンバーとして参加しており、現場のアイデアを出し合ってシステムをつくり上げた。3社は昨年からシステムを活用しているが、このたび外部に対して製品版が提供されることになった。コンソーシアム自体は現在フェーズ2に移行しており、メンバーも5社に増えている。

 市場には、化合物の情報管理のほか、バイオアッセイ(生物材料を用いて生物学的な応答を評価する実験)のデータ管理・データ解析のためのシステムはあったが、アッセイの材料となる生物サンプル自体を管理する製品は存在しなかった。そこで、大手製薬会社などはエクセルを使ったり、自社でソフトを作成したりしていたが、エンタープライズレベルで情報を統合管理する面で大きな課題があったという。とくに、最近では抗体医薬をはじめ、生物系の医薬品素材を用いた新薬開発が活発化しているが、こうした分野ではこれまで以上に生物情報の管理が重要性を帯びる。

 今回の「Accelrys Biological Registration」は、アクセルリスのプラットホーム製品である「パイプラインパイロット・エンタープライズサーバー」を用いて構築されており、データ登録と検索には「リストマネジメント&クエリーサービス」(LMQS)モジュールを使用、データベースとしてオラクルを採用している。ウェブインターフェースで簡単に操作できるが、エクセルからの一括データ登録も可能となっている。

 具体的に登録できる情報は、たん白質と抗体(Fabフラグメント、モノクローナル、ポリクローナル、シングルチェーン、シングルドメイン、合成)、プラスミド、DNA/RNA、細胞系(ハイブリドーマ、immortalized)、ワクチン(Conjugagte、DNAワクチン、有機体、Protein-only、ベクター)、siRNA−など。ウェブブラウザー対応であるため、データフィールドの表示・非表示、フィールド追加なども容易に行え、使いやすくカスタマイズすることが可能。

 情報間の関連性を自動的に相互参照する柔軟で拡張性の高い知識モデルを利用しており、キーワード検索によってコードするたん白質を含むプラスミドをリストアップしたり、配列から相同性検索して認識する抗体を探ったりするといった使い方ができる。パイプラインパイロットの機能を生かして、業務ルールやワークフローを組み込んで統合的なソリューションに発展させることも可能である。

 電子実験ノートブックなどの外部システムとの接続性に優れているため、幅広い部署のユーザーの利用に対応しているが、研究開発部門だけでなく、これまで見過ごされがちだった生物学的な知的所有権を守る意味合いでも注目を集めはじめているという。


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