アクセルリスが合併統合を踏まえて新たなシステム化構想

研究開発プロセス全体の価値連鎖を最適化、ニーズ志向への重大な転換

 2011.03.29−アクセルリスは、医薬・化学・材料研究のための新たな統合アーキテクチャー“Accelrys Enterprise R&D Architecture”を発表した。シミックスとの合併後の主要製品群の統合を受けて策定されたもので、「モデリングとシミュレーション」、「全社規模でのラボ管理」、「データ管理とインフォマティクス」、「ワークフローの定義と保存」の4つの柱からなり、研究開発の幅広い領域に対する柔軟なソリューションの実現を可能にしている。セールスとマーケティングおよびサービス担当のトッド・ジョンソン(Todd Johnson)上級副社長は、「まず製品ありきではなく、ニーズ志向への重大な転換だと位置付けている。新しい時代の研究開発や科学技術が必要とする要請に合わせて、統合的なソリューションで応えていく」と話す。

 ジョンソン上級副社長は、4つの要素が研究開発の変化につながっていると指摘する。その1つは外部委託の動きで、製薬業では臨床試験や原薬・原体の製造を中国やインドに委託する動きが広がっている。また産官学の連携も国を越えた広がりがみられ、バリューチェーンの管理がますます難しくなっているという。2つ目は当局による規制の強化。これはさまざまな産業に関係するが、製造時の安全性など、トレーサビリティーの重要性が増している。第3はモデリング技術の台頭。研究期間の短縮やパイロット作業のコスト削減の観点で、実験に先立ってシミュレーションを実施するケースが増えている。4番目として環境保全の観点が重要になるという。ムダな実験を削減して資源を節約したり汚染物質の排出を減らしたりすることに加え、リサイクル性などより優れたデザインを推進する原動力にもなっている。

 こうしたニーズを満足させるためのソリューションを体系づけたのが今回の“Accelrys Enterprise R&D Architecture”。研究開発部門のバリューチェーン全般にわたって発生するすべてのプロセスに加え、コンプライアンスの問題にも幅広く対処できる。具体的には、「Pipeline Pilot」プラットホームをデータ統合基盤とし、アプリケーションと組み合わせることにより、柔軟性に富み広範に適用できる一連のソリューションを実現している。研究開発プロセスのスケールアップや製造の初期といったフェーズを超えて、実験プロセスの記録や情報、レポートを統合して使用できるという。

 このアーキテクチャーの柱となる主要な機能は、「モデリングとシミュレーション」、「全社規模でのラボ管理」、「データ管理とインフォマティクス」、「ワークフローの定義と保存」の4つ。ジョンソン上級副社長は、「旧アクセルリスと旧シミックスの強みを合わせることにより、研究開発の上流から下流までを網羅することが可能になった。さらに、下流域を補完するソリューションをM&Aを通して揃え、包括的な製品体系を整えていく。製薬業だけでなく、幅広い材料研究に対応させていく」と説明する。

 まず最初の「モデリングとシミュレーション」は旧アクセルリスが得意とした分野で、Pipeline Pilotを基盤に、ライフサイエンス系の「Discovery Studio」とマテリアルサイエンス系の「Materials Studio」で構成される。ここでは、最新のサイエンスをタイミング良く導入し、シミュレーション技術の最先端を切り開いていくことが焦点になる。

 2番目の「全社規模でのラボ管理」は電子実験ノートブック(ELN)を中心としたソリューション。「合併後、最優先で製品統合に着手した分野」(ジョンソン上級副社長)だという。Pipeline Pilotと統合された「Symyx Notebook by Accelrys」への投資を続け、アプリケーションスイートとしての機能性をさらに引き上げていく。実験の計画を立て実施していく過程で必要なコラボレーションの機能や、実験結果を解析しレポーティングするための機能も実装する。

 3番目の「データ管理とインフォマティクス」では、旧シミックスの化学データベース管理システム「Isentris」がPipeline Pilotのサービスとして動作する。これまでの化合物情報だけでなく、ポリマーなどの高分子や生物系のデータも登録・管理できるように拡張するほか、さまざまなデバイスやクライアントに対応したユビキタス的な機能を実装していく計画だ。

 最後の「ワークフローの定義と保存」は、Pipeline Pilotを中心にしたソリューション。データ処理や解析のための科学的な手順を定義・保存しておき、それを共有・再利用することができる。「Ph.Dクラスのエキスパートが作成したプロトコルを組織全体で共有することができる」とジョンソン上級副社長。同社から「コレクション」として用途別のプロトコル集も提供される。これにより、研究におけるベストプラクティスを組織全体に広げることが容易に達成される。


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