菱化システムが「Mathematica」の販売権取得

研究者・技術者向けツールとして拡販へ、自社CCSパッケージの開発にも活用

 2011.02.19−菱化システムは、このほど米ウルフラムリサーチが開発した「Mathematica」の販売権を取得し、研究者・技術者向けの計算およびプログラミングツールとして最新バージョン8の提供を本格的に開始した。膨大な数値計算ライブラリーを持ち、数式処理も行うことができるため、既存のパッケージソフトに物足りなさを感じている上級者向けに売り込んでいく。

 Mathematicaは、複雑な数式を簡単に記述して解くというもともとの機能に加え、数値計算機能も充実し、分子構造や医療画像などのさまざまなデータを読み込んで三次元グラフィックス描画を行う機能も装備。数学だけでなく、汎用的な技術計算プログラム開発環境へと発展してきている。(最新版の機能の概要は以下の記事を参照)

 とくに、化学分野では、MOL、MOL2、SDF、SMILES形式の化合物ファイル、PDBおよびMMCIF形式のたん白質ファイル、GenBank、FASTA、NEXUSといった生物学情報を入出力することが可能。化学構造の描画、3Dモデルのレンダリングなどを行うことができる。また、二原子分子のエネルギー固有状態、時間非依存のシュレディンガー方程式、量子化学におけるさまざまな応用例を計算するための関数が用意されている。

 ウルフラム社のデータベースから3万4,000以上の化合物情報(構造、物性など)のほか、元素データ(原子量、熱伝導率、融点など)、同位体データ(構造特性、崩壊に関する特性など)をインターネット経由で取り出して利用することができる。ゲノムやたん白質に関しても、前処理なしですぐに使えるデータをダウンロードすることが可能。

 さらに、Mathematicaはプログラム開発環境としても優れた機能を備えているため、既存の化学・生物系パッケージソフトに飽き足らずに自分でプログラミングを行うような上級者には最適なツールになるという。

 実際、菱化システムでも、自社CCS製品の開発にMathematicaを活用。粉末X線構造解析ソフト「Crystal Profiler」のスタンドアロン版GUI開発に役立てている。Crystal Profilerは、昨年10月に統合計算化学システム「MOE」の拡張パッケージとして製品化されているが、ユーザーの裾野を広げるためスタンドアロン版の発売も計画中。Mathematicaは開発環境としても想像以上に使いやすいということだ。


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