アクセルリスが分子モデリング製品の統合スイート

パイプラインパイロットで統合、新製品「QSARワークベンチ」も

 2011.05.26−アクセルリスは、統合後の新しいソリューション体系である“Accelrys Enterprise R&D Architecture”に基づき、計算化学/分子モデリングソフトウエアを集めた統合スイート製品として「Accelrys Modeling and Simulation Suite」(モデリング&シミュレーションスイート)を発売した。多種類のソフトをワークフローで連携させるプラットホーム製品「Pipeline Pilot」(パイプラインパイロット)を基盤に統合化が実現されていることが特徴。薬物設計などの生命科学分野から化学・材料科学分野まで、物質や素材を対象にした全方位の研究に対応できる。現時点では既存製品を寄せ集めた印象だが、今後の製品ロードマップが注目される。

 アクセルリスのモデリング製品は、生命科学系の「Discovery Studio」と材料科学系の「Materials Studio」の2つのパッケージに大きく分かれていたが、ともにPipeline Pilotとの統合が進展。Discovery StudioはすでにPipeline Pilotにほぼ完全対応するかたちでつくり直されており、Materials Studioの方もPipeline Pilotへの対応がかなり進んできている。

 そこで、今回のモデリング&シミュレーションスイートだが、具体的にはDiscovery StudioとMaterials Studio、そしてPipeline Pilotのライフサイエンスモデリング&シミュレーションコレクションおよびマテリアルモデリング&シミュレーションコレクション、さらに新製品の「QSAR Workbench」(QSARワークベンチ)が含まれている。

 とくに、QSARワークベンチは、今後の同社の製品づくりのコンセプトを探る意味でも重要になるソリューションだと思われる。一口で言うと、Pipeline PilotをベースにQSAR(定量的構造活性相関)研究を行うために必要なコンポーネントを揃えた製品。QSAR予測モデルの開発・検証・導入の自動化、モデルの共有と解析の迅速化を実現することができる。

 QSARは物性を予測するために多用される手法だが、モデルを構築する作業には統計解析の専門家が数日を要する場合もある。QSARワークベンチは、ウェブベースのユーザーインターフェースを備え、ウィザード形式で一連の作業を行うことが可能。データの準備、データ分割、記述子計算、モデル構築、モデル検証、モデルの公開−の6つの主要ステップに作業が分かれ、さらにそれぞれにサブステップが設けられている。これらを順番に行うことで一連の作業手順が完了する。

 これは、専門家が行う作業性を改善するとともに、この専門知識に研究者全員が簡単にアクセスできる利点を生むという。専門家がつくったモデルを共有し、自分の研究プロジェクトに予測手法を取り入れることができるほか、専門家が各ステップで行った設定内容などが記録されているため、それを理解して応用することも容易になる。

 このソフトは、製薬会社のグラクソスミスクラインと共同開発されたものだが、医薬品開発だけでなく、材料物性の予測などにも適用することが可能だ。

 また、提供方法としては、通常のパッケージソフト販売ではなく、アクセルリスのプロフェッショナルサービス経由で提供されることも特徴。これは、パッケージ販売と受託研究との中間的な形態で、ユーザーのやりたいことに合わせて、必要な計算エンジンや統計手法などのコンポーネントを選択し、サポートをつけてシステム全体を提供していく。結果として、ユーザーは自社に最適化された使いやすいシステムをリーズナブルに導入し、本来の研究活動に専念できるということになる。

 今後、QSARワークベントと同様のコンセプトでのシリーズ展開が進むかどうかは未定だということだが、Pipeline Pilotに完全対応したモデリング製品体系の今後のロードマップが注目される。


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