SAPジャパンがインメモリーカラム型DB普及で専門組織

第3世代データウェアハウスで注目、将来的にはリレーショナル型を代替も

 2011.04.23−SAPジャパンは20日、インメモリー・アプライアンス・ソフトウエア「SAP HANA」に関するプレスセミナーを開催し、データウェアハウス(DWH)業界の最新動向を交えて、昨年12月にリリースして以降のビジネスの状況などについて解説した。それによると、インメモリーで検索できるなどリアルタイム性に優れるカラム型データベースは、現在のリレーショナル型データベースに代わって将来の主流になる可能性が大きいという。同社では、日本法人独自にHANAを専門に扱う「リアルタイムコンピューティング推進本部」を新設し、さらなる普及を目指す。

 SAP HANAは、ハードウエアと一体化してアプライアンスとして提供されている製品で、すでに認定サーバーとのセットにより国内で製品化している日本HP、日本IBM、富士通に加え、デルとシスコがシステムを提供する体制となっている。先行する3社は発売後4ヵ月でそれぞれ顧客を獲得するなど、立ち上がりがきわめて順調だという。

 大量データを分析しビジネスの意思決定に活用するDWH分野のソリューションが中心だが、とくに元となるデータを生成するERPなどの業務システムとして、SAP以外と連携できるオープン性が評価された。ただ、今後は、さらなる大量データを瞬時に解析できるリアルタイム性が注目を集めるとみている。また、モバイルアプリケーションでは、レスポンスに対するユーザーの要求が厳しいためリアルタイム性のあるデータベースが必要になる。さらに、将来の大規模なクラウド時代の要件にかなうデータ管理基盤がまだ存在していない。これらのトレンドを見越して、SAPは今回のHANAを自社開発したのだと説明した。

 一方、DWH業界では大手ベンダーによるM&Aが展開され、勢力図が大幅に塗り替えられた。2007年にはBIベンダーの買収が相次ぎ、昨年から今年にかけては既存DWHベンダーが買収のターゲットになってきている。そうしたなかでイノベーターとして注目されるのが、インメモリーのカラム型データベースベンダーだというのが同社の考え方だ。SAP以外にも3社ほどあり、すべて5年以内の若い企業だという。

 同社の説明によると、HANAは第3世代のDWHシステムで、汎用ハードと汎用ソフトを使ってエンジニアが手組みしていた第1世代、ハードウエアを専用化して速度を稼いだ第2世代に対して、第3世代は汎用ハードの上で高度に専門化されたソフトウエアを用いることにより、大幅な低価格化と高速性を引き出している。具体的に、第2世代システムでTPC-Hベンチマークで40万クエリーの性能を出すシステムは、ハードに5.4億円とソフトに0.8億円がかかるのに対し、第3世代システムではハード0.3億円とソフト1.1億円で同550万クエリーの性能のシステムを購入できる。性能で14倍、価格は4分の1になるとした。しかも、ハードは汎用のサーバーなので、性能が向上するペースも速い。

 実際のHANAのユーザー事例では、4600億件/50テラバイトのPOSデータを0.04秒で検索できるという。しかも、第2世代DWHではインデックスやデータマートを作成するため実際のディスク容量は実データの何倍にも膨れ上がってしまうが、HANAでは50テラバイトの実データをインメモリーで3テラバイトに圧縮して扱うことになる。また、パフォーマンスを引き出すための複雑なコーディングが不要(コーディング量を75%削減)なことも大きなメリットになるということだ。

 このため、現在のインメモリーカラム型データベースは、ユーザーにとっては新しい選択肢として登場した存在にすぎないが、リアルタイム性を生かして次第にあらゆるアプリケーションに採用されるようになり、最終的には現在のリレーショナル型データベースを大きく置き換えていくというのが同社の結論である。新設したリアルタイムコンピューティング推進本部を核に、積極的な展開を図りたいとしている。


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