アクセルリスが「Materials Studio」の最新バージョン6.0をリリース

量子力学・古典力学計算機能さらに強化、ナノ構造と物性との関係を解析

 2012.01.26−アクセルリスはこのほど、材料設計のための統合モデリングシステム「Materials Studio」(マテリアルスタジオ)の最新バージョン6.0をリリースした。量子力学および古典力学ベースの計算手法が大幅に強化され、ナノスケールの構造と物性との関係などを高精度にシミュレーションすることが可能。予測できる物性の幅が広がり、解析時間の短縮が可能になったほか、一般ユーザー向けの操作性も向上している。

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 今回の「Materials Studio 6.0」の新機能を量子力学計算分野と古典力学計算分野に分けて主要なところをみていくと、まず量子力学では新モジュールの「DFTB+」が提供された。これは密度汎関数法(DFT)ベースのタイトバインディング計算プログラムで、DFT計算の精度で高速・大規模なシミュレーションを行うことが可能。一点計算、構造最適化、動力学計算に活用でき、電子密度やバンド構造・状態図、電子軌道、ポピュレーション解析、フェルミ面などの特性を計算できる。

 半経験的な方法であるためパラメーターが重要になるが、「DFTB+」にはユーザー自身がパラメーターを作成する機能も組み込まれている。背後でDFTプログラムの「DMol3」が走ってパラメーターをフィッティングさせることが可能。ダイヤモンドの核生成、シリコン結晶中の原子空孔、有機と無機の界面、たん白質の相互作用、結晶多形でのスクリーニングなどの問題に応用できるという。とくに、有機と無機が混在した系は、従来の古典力学(パラメーターの扱いが難しい)でも量子力学(計算対象として大きすぎる)でも扱いにくい分野だったが、「DFTB+」は量子力学で数百から数千原子のオーダーの計算が行えるという利点がある。酸化アルミニウム表面へのポリマーの接着といった現象をうまく解析できるとしている。

 次に、「DMol3」については、ハートリーフォック法とDFTのハイブリッド汎関数である“B3LYP”に対応したことが大きな強化点となる。これは、Gaussianでも多用される設定で、ユーザーからの要望が高かった。いまのところ分子系のみの対応で、周期系には対応していない。

 また、「DMol3」では新たにラマンスペクトルの予測が可能になったほか、時間依存DFT計算の拡張で開殻系に対する紫外線/可視光の光学スペクトル計算にも対応している。

 最後に、DFTベースの第一原理平面波・擬ポテンシャルプログラム「CASTEP」では、線形応答理論の金属系への適用がなされた。これにより、絶縁体や半導体に加え、金属系に対しても、相転移の研究や中性子線散乱、非弾性X線散乱で測定されるフォノン研究における解析に活用できるようになった。

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 古典力学分野では、分子動力学プログラム「Forcite Plus」と粗視化分子動力学法プログラム「Mesocite」でせん断条件下のシミュレーションが可能になった。その結果をもとに高分子のせん断粘性を見積もることが可能。また、PCFFとCVFFをカスタマイズしてオリジナルの新しい力場を作成することができるようになっている。

 さらに、温度や圧力の扱いで、より安定的で早く平衡化できる“NHL(能勢・フーバー・ランジュバン)熱浴法”、結晶構造の相転移などの現象を解析するため圧力を一定にする“パリネロ圧力制御法”に対応した。

 さらに、トラジェクトリーデータの出力設定をきめ細かく行うことが可能になり、酸素分子が拡散する様子など、モデルの中の特定の分子だけを追跡することなどができるようになっている。

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 そのほか、粉末X線回折データからの構造予測を行う「Reflex Plus」で、指定した箇所の距離や角度を固定して探索範囲を絞り込み、計算速度をアップさせる手法を導入した。現時点では二面画の固定はできないが、これまでよりもかなり効率的に結晶構造をみつけることができるようになっているという。

 また、「Materials Studio」の機能を呼び出してオリジナルのプログラム作成が行えるスクリプト言語「MaterialsScript」の機能が強化された。自作のスクリプトを「Materials Studio」のメニューに組み込んで、簡単に起動することが可能。計算条件などを入力するダイアログボックスを表示させるなど、簡易的なGUI機能も追加されている。これにより、エキスパートが作成したスクリプトをグループで共有して一般ユーザーが簡単に活用するなど、コラボレーションの活性化にも役立つとしている。

<関連リンク>

アクセルリス(日本法人のサイト)
http://accelrys.co.jp/

アクセルリス(Materials Studio 製品紹介ページ)
http://accelrys.co.jp/products/materials-studio/


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