米パーキンエルマー:マイケル・ステープルトンGMインタビュー

“RD&M”でインフォマティクス統合、電子ノートをさらに強化

 2012.04.04−米パーキンエルマーが、ケンブリッジソフトをはじめとするソフトベンダーを相次ぎ買収し、医薬品の研究開発から製造までの幅広い領域を網羅する目的で、ソフトウエア事業の強化を推進している。電子実験ノートブック(ELN)を基盤に、各種の計測・分析・試験データの統合を含め、“情報”の活用を核としたソリューションを提供していく。新設されたインフォマティクス事業部門を率いるマイケル・ステープルトン(Michael Stapleton)ジェネラルマネジャー(GM)に戦略を聞いた。

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 パーキンエルマーのインフォマティクス事業部門は、化学情報管理のデータベースシステムやELN、化学者向けデスクトップ製品で実績のあるケンブリッジソフトに加え、品質分析・試験業務のデータ管理システムを開発していたラボトロニクス、ELNベンダーのアルタスラボ、LIMS(研究情報管理システム)ベンダーのラボワークス−の4つのベンダーが統合されたもの。「昨年はそれぞれの組織や技術を統合する作業に追われたが、今年からはまとまった1つの事業部として活動することが焦点になる」とステープルトンGM。製薬会社のインフォマティクス領域を統合する大きな構想を描いている。

 医薬品の研究および開発、さらに医薬品製造にかかわる品質管理の分野に製品を展開し、各種の計測器や実験装置をELNやLIMSに統合する“LimsLink”、研究情報の検索・解析・可視化を行う“Ensemble”技術を横串に通して基盤技術としている。

 なかでも、ポイントになるソリューションがELNだ。「化学系から生物系へ、研究開発領域から製造分野へと対象を広げていくとともに、マイクロソフトやオラクル、スポットファイアー、エルゼビア、ナイムなどとの統合も視野に入れている。LimsLinkで他社製品を含めた様々な装置をサポートできることも特徴で、ELNとSDMS(科学情報管理システム)、LIMSをトータルシステム化することが可能。とくに、ラボトロニクスやアルタスラボ製品はこれまで日本市場で紹介されていないので、ユーザーの興味を集めると思う」(ステープルトンGM)という。

 次世代の新しい生物系ELNについてステープルトンGMは、「マイクロソフトのオフィスソフトと同様のモダンなリボンインターフェースを採用しており、使い勝手がいい。化学系のELNはタブで画面を切り替えていたが、今回の生物系ELNは垂直スクロール式に変わったことが特徴だ。ボタンひとつでタブ式に戻すこともできる。生物系研究者に満足してもらえる製品に仕上がっている」と自信をみせる。

 また、統合化のもとに蓄積された豊富な情報の活用を助ける「Geniusシリーズ」も期待の大きい新製品である。「Search Genius」は、マイクロソフトの文書管理/コラボレーション基盤製品である「SharePointサーバー」を利用し、検索に同社のFAST技術を採用している。このため、構造式や自由なキーワードを入力すると、Googleのようにいろいろなソースから該当する情報を探し出してきてくれる。ユーザーは検索する場所を指定する必要はない。ほしい情報がELNの中に含まれていれば、自動的にELNが起動してそれを閲覧することができる。社内の情報だけでなく、外部のサイトを含めて情報を検索することも可能。

 「Reaction Genius」も、同様に反応情報を検索するシステム。ELNに記録された反応情報だけでなく、他社の反応データベースも同時に検索できる。検索結果はグラフなどで視覚化することも可能で、ダッシュボード式に情報を一覧できるので非常にわかりやすい。

 「そのほか、バイオアッセイ情報なども含め、データ取り込みからデータ解析・可視化までをトータルに行う環境を用意している。Spotfireと連携してさらに高度な解析を行うことも可能。要望の多いレポート出力機能も強化した」(ステープルトンGM)

 一方、品質検査業務のQA/QC関係では、「SOP(標準作業手順書)の電子化を実現できる。数百ページの紙のSOPをスキャンして、数時間で電子化することが可能。SOPに従って適切に検査を実施したあと、LimsLinkを介して測定値が入力されるので記入の漏れやミスがなくなる。他社の測定器も広くサポートしているのが特徴だ。社内にたくさんの機器があっても、Asset Geniusを利用することで、それらの資産管理が容易になる。それぞれの稼働状況を吸い上げ、プロジェクトごと、オペレーターごと、測定メソッドごとなどに利用状況を分析することができる。研究資産の活用に関するビジネスインテリジェンス(BI)のイメージだ」とステープルトンGM。

 パーキンエルマーの製品戦略としては、研究開発から製造までをカバーする“RD&M”を、インフォマティクス技術でトータルに支援することを強調している。

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 − ELN市場の今後の展開は。

 「化学系から生物系へ、研究開発業務から品質検査業務へと利用範囲が広がる。また、医薬品開発支援機関(CRO)などの外部パートナーを活用する動きが広がっていることもチャンスになる。CROも同じELNを用いて情報を記録することで、製薬企業とのコラボレーションがさらに円滑に行えるためだ。とくに、最近は中国のCROとのコラボが目立つ。パーキンエルマーは中国で50年前からビジネスをしており、600人の社員を現地に置いている。インドや南米も含めて市場の潜在性は大きいと感じている」

 − 幅広いソリューションを提供するためのパートナーシップについて。

 「マイクロソフトやオラクルをはじめ、QA/QC関連ではSAPとの連携も重要になる。クラウド関連では、アマゾンドットコムおよびマイクロソフトと協調した実績がある。データコンテンツではエルゼビアのReaxysを利用。また、ELNでも今後はモバイルへの対応が重要になると考えている。実験室にノートPCを持ち込むことは難しい場合が多いが、タブレット端末なら都合が良いという意見も増えている。その意味で、iPadを持つアップルも重要なパートナーになる」

 − 販売戦略について。

 「われわれにはしっかりした組織と豊富なスタッフがおり、新しい分野には直販方式で取り組んでいきたい。ただ、デスクトップ製品をはじめとする既存分野については、長年の代理店との関係もあるので、チャネル販売を継続していく」

 − 日本法人の体制について。

 「旧ケンブリッジソフトのスタッフなどを中心に、この1月にパーキンエルマージャパンとしてインフォマティクス事業部門を設立した。今後さらに人員増を図るが、日本法人の既存の他部署との連携でも相乗効果を引き出すことができると期待している」

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<関連リンク>:

パーキンエルマー(旧ケンブリッジソフトのトップページ)
http://www.cambridgesoft.com/

パーキンエルマー(トップページ)
http://www.perkinelmer.com/

パーキンエルマージャパン(トップページ)
http://www.perkinelmer.co.jp/


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